2026/03/03
【横浜・戸塚駅西口 徒歩10分/駐車場あり】
内科・循環器内科・糖尿病内分泌内科|戸塚クリニック
(院長:村松 賢一)
当院は「内科のかかりつけ」として、
高血圧・糖尿病などの生活習慣病や体調不良、
甲状腺を含む内分泌のご相談まで幅広く対応しています。
予約優先制ですが、予約なしでも受診可能です。
(予約をおすすめする理由は待ち時間を短くするためです。
混雑時はお待ちいただく場合がありますが、症状に合わせて柔軟に対応します)
症状が気になる方は、ご都合のよいタイミングでお越しください。
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戸塚クリニック(横浜市戸塚区)|院長ブログ
院長・内科医・循環器専門医 村松賢一
スタチンをやめた・やめようか迷っている方へ|副作用の「本当のところ」と再挑戦法を医師が解説
※画像はAIにより生成されたイメージです【筋肉痛でスタチン中止?】副作用の本当のところ
結論:「痛み=即中止」ではなく、まずは原因の切り分けを行うのが最も安全です。
- その痛み、実は「薬のせい」ではない可能性: 大規模な検証(2026年 Lancet論文)により、スタチンによる筋肉痛(真の副作用)は、想像されているよりも統計学的に少ないことが分かっています。
- 「ノセボ効果」への理解: 薬への不安から痛みを感じてしまう現象も報告されています。あなたの痛みが「薬の作用」か「それ以外の要因」かを見極めることが大切です。
- 有意に増加したのは4項目のみ: 66項目におよぶ副作用候補を検証した結果、統計的に差が認められたのは肝数値や浮腫など4項目のみでした(絶対リスクは年0.13%とわずかです)。
- 「やめる」より「調整」: 自己判断の中止は血管リスクを高めます。薬の種類を変えたり、飲む回数を減らしたりする「再挑戦(リチャレンジ)」を一緒に考えましょう。
※本記事は2026年3月時点のエビデンスに基づきますが、個別状況は診察でお聞かせください。
参照:Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboration(The Lancet:2026年2月5日オンライン公開)
外来でよくあるご相談
- 「筋肉が痛い気がする。薬のせい?」
- 「副作用が怖いのでやめたい」
- 「肝臓や脳に悪いと聞いた」
結論から言うと、重篤な副作用は稀で、筋肉症状(SAMS)の多くは「因果関係がはっきりしない」ことが少なくありません。 また、2026年2月5日オンライン公開のThe Lancet論文は、公式情報に列挙される多数の”副作用候補”を、二重盲検RCTで統計学的に検証し直した研究です。
※位置づけ(誤読防止の補足)
筋肉症状(SAMS)や新規糖尿病は、過去の研究でも重要テーマとして検討されてきました。
一方、今回(2026年2月5日公開)の論文は、主として「それ以外の副作用候補」を二重盲検RCTでまとめて再点検した位置づけです。
0|そもそもスタチンとは? コレステロールを下げる仕組み
スタチンは、肝臓でコレステロールを作る経路(HMG-CoA還元酵素)を抑えて、LDLコレステロールを下げる薬です。 目的は「数字を下げること」そのものではなく、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性イベントを減らすことにあります。 心筋梗塞などを起こしたことがある方(二次予防)では5年間で主要な心血管イベントを相対的に約10%程度、まだ発症していない方(一次予防)でも相対的に約5%程度減らす効果が示されています。

「自分が飲んでいる薬がスタチンかどうか分からない」という方のために、主な薬剤を一覧します。
主なスタチン一覧(一般名/代表的な商品名)
| 一般名 | 代表的な商品名(例) |
|---|---|
| アトルバスタチン | リピトール® |
| ロスバスタチン | クレストール® |
| ピタバスタチン | リバロ® |
| プラバスタチン | メバロチン® |
| シンバスタチン | リポバス® |
| フルバスタチン | ローコール® |
※商品名は先発品(オリジナル薬)の名称です。当院ではジェネリック医薬品(後発品)を中心に処方しています。
1|SAMSとは?(筋肉痛の”呼び名”です)
SAMS(Statin-Associated Muscle Symptoms:スタチン関連筋肉症状)は、「スタチン内服中に出た筋肉症状」の総称です。
- 筋肉痛(myalgia)
- こむら返り
- だるさ/筋力低下
ただし、SAMS=すべてがスタチンのせいではありません。 筋肉痛は加齢・運動・睡眠・脱水・甲状腺機能・ビタミンD不足・併用薬などでも起こり得ます。 筋症状は治療開始の早期(数週〜数ヶ月)に出現しやすい傾向がある一方で、用量変更や体調変化を契機に後から出ることもあります。
2|CKって何?(採血で見る”筋肉ダメージの目安”)
CK(クレアチンキナーゼ)は、筋肉の細胞が傷ついたときに血液中で上がりやすい酵素です。
- 筋肉痛があってもCKが正常:よくあります(軽いSAMSの多く)
- CKが大きく上がる:頻度は低いが注意(筋障害の可能性)
- 目安として、医療現場ではCKが基準値上限の10倍超などでは筋障害(myopathy)を疑い、対応を慎重にします
※CKは運動直後・筋肉量・注射・転倒・感染などでも上がります。数値だけで決めず、症状・経過・併用薬・甲状腺機能なども合わせて判断します。
3|2026年2月5日公開 The Lancet 統合解析の要点
この論文は、二重盲検RCT(本物の薬か偽薬か、患者さんも医師も分からない試験)の結果をまとめて、「公式情報に書かれている副作用候補は、本当にスタチンで増えるのか?」を検証したものです。
規模(要点)
- スタチン vs 偽薬:19試験・約12.4万人・追跡中央値4.5年
- 合計:23試験(より強いスタチン vs 弱いスタチンの比較も含む)
12万人超・4年以上の追跡という規模は、一般的な副作用を検出するには十分な「検出力」を持つ試験規模です。(CTT Collaboration 統合解析より)
4|「添付文書に並ぶ副作用候補」を、統計学的にどう扱ったか
欧州の公式製品情報(SmPC)とは?
論文で参照されているSmPCは、欧州で用いられる公式な製品情報(日本で言う添付文書に近い概念)です。 ここに”望ましくない作用”として多くの項目が列挙されます。
多重比較(たくさん調べるほど偶然の陽性が増える)
副作用候補を多数調べると、関係がなくても偶然「差がある」と出る(偽陽性)が混ざりやすくなります。
FDR補正(false discovery rate)
そこで本論文は、多重比較に伴う偽陽性を制御するためにFDR補正を用い、調整後に有意差が残る項目だけを抽出しています。
5|検証結果:統計的に有意に増えたと言えるのは4項目のみ

統計学的な調整(FDR補正)をしたうえで、「スタチンで増えた可能性が高い」と今回新たに確認されたのは、66項目中4項目でした。
- 肝トランスアミナーゼ異常(AST・ALT上昇:採血で分かる肝臓の数値)
- その他の肝機能検査異常(ビリルビン・ALP等の軽度変化)
- 尿成分の変化(蛋白尿・血尿など尿検査での変化)
- 浮腫(足や顔のむくみ)
安心材料(絶対リスクの”規模感”)
肝機能検査異常は、論文で示された絶対年超過は0.13%(The Lancet 2026;407:689–703)です。
これは、ざっくり言えば年間1000人あたり1.3人程度の上乗せという規模感です。
6|スタチン 筋肉痛の本当の原因は? ノセボ効果とは
認知機能の問題・抑うつ・睡眠の問題・末梢神経障害などについて、二重盲検RCTベースでは「スタチンで増える」と言える根拠が乏しい(支持されにくい)ことが、今回の整理の趣旨です。
ただし、「薬を飲んでいる」という意識が症状を引き起こすノセボ効果(nocebo effect)の影響も知られており、「気のせいだ」と切り捨てるのではなく、不安や症状は遠慮なくご相談ください。
7|当院の方針:中止より「再挑戦(リチャレンジ)」を優先します

「副作用かも?」と思ったとき、いきなり永久中止にする前に、当院では次の順で安全に考えます。
- 一時的に中止して症状が落ち着くか確認
- 再開して再現するかを確認
- 種類変更(体質や飲み合わせに合わせる)
- 用量調整/非毎日投与(隔日・週2回など)
- 必要なら他剤併用でLDL低下を確保
横浜市戸塚区の内科・循環器内科(戸塚駅周辺)でスタチン治療中の方で、「副作用が不安」「中止すべきか悩んでいる」という場合は、外来でお気軽にご相談ください。
追補(Appendix)詳細版
より詳しく知りたい方向けの補足です(本文の結論は変わりません)。
追補A|スタチン筋肉痛(SAMS)の重症度分類と発症頻度
スタチン 横紋筋融解症の実際の頻度
横紋筋融解症(Rhabdomyolysis)はCK著増+腎障害を伴い得る重篤な状態ですが、一般に非常にまれであり、その頻度は報告によって幅があるものの極めて限定的です。 とくに相互作用、脱水、感染、腎機能低下などが重なるとリスクが上がり得るため、「頻度の数字」よりも危険サイン(強い筋痛、脱力、褐色尿など)があれば早めに相談することが重要です。
SAMSは「症状の総称」で、重症度に幅があります
- Myalgia:CK正常・痛みのみ(最も多い)
- Myopathy:CK上昇を伴う筋障害
- Rhabdomyolysis(横紋筋融解症):CK著増+腎障害を伴い得る(非常にまれ)
出現時期は「早期に出やすいが、後からも起こり得る」
筋症状は治療開始早期に出現しやすい傾向がある一方で、用量変更・薬剤変更・体調変化を契機に再出現することもあります。 したがって「いつ起きるか」よりも、症状の程度とCK、背景因子の確認が実用的です。
追補B|2026年2月5日公開The Lancet論文の読み方:66項目の副作用候補とFDR補正(多重比較の調整)
論文設計の補足
欧州の公式製品情報(SmPC)に列挙される副作用候補66項目を、二重盲検RCTデータで一括検証した設計です。 多重比較(項目が多いほど偶然の陽性が増える)を制御するためFDR補正を適用しており、調整後に有意差が残った4項目のみが「スタチンで増えた可能性が高い」という結論になります。
有意差が確認された4項目のリスク比(RR値)参考資料
論文で報告されたリスク比(RR)の参考値は以下のとおりです。いずれも統計的に有意でしたが、絶対リスクの上乗せは小さく、臨床的意義は個別に判断が必要です。
- 肝トランスアミナーゼ異常:RR 1.41(95% CI 1.26–1.57)
- その他の肝機能検査異常:RR 1.34(95% CI 1.18–1.52)
- 尿成分の変化:RR 1.24(95% CI 1.12–1.38)
- 浮腫:RR 1.17(95% CI 1.09–1.26)
※上記RR値は論文(The Lancet 2026;407:689–703)における多変量調整後・FDR補正後の参考値です。
追補C|CKが高いと言われたとき:スタチン以外に考える原因(甲状腺・運動・併用薬など)
CK上昇=即「薬のせい」とは限りません
- 激しい運動後
- 外傷・転倒
- 感染症
- 甲状腺機能低下症
- 併用薬(例:一部の脂質異常症治療薬など)
CK単独で判断せず、症状・経過・併用薬・腎機能・甲状腺機能などを合わせて総合判断します。
追補D|スタチンがつらい時の再挑戦(リチャレンジ)手順:低用量・隔日・併用(エゼチミブ等)の考え方
実践的アプローチ(例)
- 一時中止 → 症状消失の確認
- 同薬剤で再開し再現性の確認
- 体質・相互作用を考えて薬剤変更(タイプ変更)
- 低用量化/隔日・週2回など頻度調整
- 必要に応じて他剤併用でLDL低下を補完(例:エゼチミブ等)
スタチンを続けるかどうかは、一緒に決めます
「必ず続けるべき」という話ではありません。リスクとベネフィット、症状の程度、生活背景を踏まえて、続け方の選択肢を一緒に検討するのが現実的です(個人差があります)。
参考リンク
- Cholesterol Treatment Trialists’ (CTT) Collaboration
「Assessment of adverse effects attributed to statin therapy in product labels: a meta-analysis of double-blind randomised controlled trials」
The Lancet. 2026年2月5日オンライン公開/2月14日号(407巻10529号)689–703.
doi:10.1016/S0140-6736(25)01578-8 - CTT Collaboration(研究基盤)
- 英国:メディア報道後にスタチンを中止した患者が増加した観察研究(BMJ 2016)
- The Lancet本文(HTML:図表・補足資料はこちら)
本記事は2026年3月時点のエビデンスに基づきますが、個別状況は診察でお聞かせください。
本記事は一般的医学情報の提供であり、個別の治療判断は診察のうえで行います。
