2025/11/28
インフル迅速検査の「12時間待てば陽性になる」は本当?
― 医学的には「単純な12時間ルール」としては成り立ちません
「インフルエンザの検査は 12時間経たないと陽性にならない」
毎年のように耳にするこの話ですが、医学的な“決まり”としては存在しません。
CDC・IDSA・AAP(小児科学会)など 世界の主要ガイドライン は、いずれも共通して
症状が出たら、できるだけ早く検査を
という方向性を示しています。
(下記リンクはいずれも医療従事者向けの専門資料です。不安な場合はスタッフにお尋ねください。)
- CDC: as early as possible(3〜4日以内が最適)
https://www.cdc.gov/flu/hcp/testing-methods/clinician_guidance_ridt.html - IDSA: as soon as possible after illness onset
https://www.idsociety.org/practice-guideline/influenza/ - AAP(米国小児科学会): as close to illness onset as possible
https://publications.aap.org/pediatrics/article/doi/10.1542/peds.2025-073620/202845
※AAPの方針は、重症化リスクのある小児で、発症早期に診断・治療を行うことの重要性を強調した内容です。
なぜ「早め」の検査が良いのか?
インフルウイルスは、一般的に次のような経過をたどります。
- 発症の前後〜1〜2日でウイルス量がピークになる
- その後、徐々に減っていく
日本の研究でも、発症48時間以内は特に陽性が出やすい と報告されています。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7202626/
そのため、患者さん向けには次のように説明すると現実的です。
- 発症後1〜2日が「特に」当たりやすい
- それ以降でも、3〜4日目くらいまでは陽性になる方が多い
「12時間待ち」説はどこから来たのか?
実際の診療では、次のようなケースがあります。
- 発症して数時間で検査 → 陰性
- 翌日にあらためて検査 → 陽性
ここから、
「12時間くらい経たないと陽性にならないらしい」
という“12時間ルール”のような噂が広がったと考えられます。
しかし、これは
「発症早期のウイルス量には個人差が大きい」ことの言い換えに過ぎず、
医学的な“決まり”があるわけではありません。
さらに、読取装置付きの高感度迅速検査(機器型 RIDT)では、
発症12時間以内でも陽性になる例が普通にあります。
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7202626/
迅速検査はとても便利ですが、“万能”ではありません
従来型 迅速検査(RIDT)の性能
CDCが示す従来型迅速検査(RIDT)の性能は、概ね次の通りです。
- 感度(陽性を見つける力):おおむね 50〜70%
- 特異度(間違った陽性を出さない力):90〜98%
参考:
https://www.cdc.gov/flu/hcp/testing-methods/rapidclin.html
https://www.acpjournals.org/doi/10.7326/0003-4819-156-7-201204030-00403
高感度RIDT(機器型)はここが違います
読取装置を用いる高感度RIDTでは、
- 感度75〜85%以上の報告もある
- 発症48時間以内の検出率が97.9%
- 発症12時間以内で100%と報告された製品もある(製品ごとの違いあり)
参考:
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4313304/
感度・特異度・高感度RIDTが「一発でわかる」表
(スマホでも読みやすいように構造をそろえています)
| 用語 | 意味 | RIDTでは… |
|---|---|---|
| 感度 | 陽性を見つける力 | 50〜70%(高感度なら75〜85%以上) |
| 特異度 | 間違った陽性を出さない力 | 90〜98%と非常に高い |
| 高感度RIDT | 少ないウイルス量でも拾いやすい | 発症12時間以内でも陽性が出ることがある |
特異度が高い検査なので、
検査で「陽性」と出れば、まずインフルエンザと考えてよいという性質があります。
【制度上の大切なお知らせ】高感度RIDTは、すべての方が「保険適用」で受けられる検査ではありません
わが国の診療報酬制度では、機器型の高感度検査や核酸検査などは、
- 年齢
- 基礎疾患の有無
- 症状の重さ
などを踏まえて、医師が保険適用の可否を判断する仕組みになっています。
そのため、
- すべての患者さんが同じ条件で保険で受けられるわけではない
- 検査方法の選択は、症状・背景・制度上の条件をふまえ、医師が総合的に判断してご提案します
※特定の検査法の優位性をうたうものではなく、制度に関する一般的なご説明です。
詳細は受診時に医師がご説明します。ご不安な点はいつでもお気軽にご相談ください。
発症前の検査は推奨されません
インフルエンザの潜伏期間は、
- おおよそ 1〜2日
- 中央値は 1.4〜1.9日 と報告されています
参考:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19393959/
この「症状が出る前」の時期は、
- 抗原量(ウイルスの量)がまだ少なく、迅速検査で陽性になることは“まれ”
- CDC や IDSA などのガイドラインでも、無症状期の検査(スクリーニング)を日常的に行うことは推奨されていない
再検査・再受診の目安
次のような場合には、早めに医療機関へご相談ください。
- 38.5℃以上の高熱が続いている
- ぐったりして動けない・息苦しさが強い
- 咳がどんどん悪化している
- 家族など身近にインフルエンザ確定者がいる
- 乳幼児・高齢者・持病(心臓・肺・腎臓・糖尿病など)がある
市販の検査キットを何度も繰り返すより、
医療機関でまとめて評価してもらう方が、結果として安全なことが多いです。
患者さん向け「いちばん大事なポイント」まとめ
- 「12時間待てば陽性になる」という決まりはありません。
- 検査は、発症後できるだけ早め(特に1〜2日以内)が当たりやすいです。
- 3〜4日目でも、多くの方で陽性が出ることがあります。
- 迅速検査は便利な反面、“万能”ではなく、検査法によって性能に差があります。
- 陰性でもインフルエンザの可能性が残ることがあります。症状が強い場合や不安な場合は、自己判断で様子を見すぎず、医療機関にご相談ください。
