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🇺🇸 アメリカ政府シャットダウンと医療費 ― 日本との比較で考える
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🇺🇸 アメリカ政府シャットダウンと医療費 ― 日本との比較で考える

―― 医療費は家計の不安だけでなく、政治を揺るがすテーマだった

実はこれ、英語の勉強にも:NYT The Daily

🎧 耳から学ぶ習慣は、思いがけない視点を与えてくれる

私は合間の時間に、ニューヨーク・タイムズの音声番組 The Daily をよく聴いています。2025年10月2日配信のエピソードは「アメリカ政府シャットダウンと医療費」。政治と医療制度がどれほど密接に絡むのかが浮き彫りになっていました。
(音声はこちら → https://www.nytimes.com/2025/10/02/podcasts/the-daily/government-shutdown-healthcare.html


今回の政府シャットダウンはなぜ起きたのか?

アメリカでは、政府予算が議会で可決されなければ、連邦政府の多くの機能が止まってしまいます。今回はその原因が「オバマケア(ACA=Affordable Care Act、医療保険制度改革法)の補助金延長をめぐる対立」でした。

民主党は「補助金を延長しなければ保険料が跳ね上がり、数百万人が困窮する」と主張。
一方、共和党は「財政負担が大きすぎる」と反発し、妥協を拒否。結果、政府予算案が通らずシャットダウンとなったのです。

The Daily ではこう表現していました:

“Democrats are making health care the centerpiece of the shutdown fight.”
(民主党は今回の政府閉鎖を、医療費問題をめぐる闘争の中心に据えている)

つまり今回も、民主党が医療を政争の具にしているのです。


政府閉鎖の中心にある「医療費」

NYTのMargot Sanger-Katz記者は次のように説明していました。

  • 「低所得者の中には、これまで0ドルで保険に入れていたのに、来年は毎月35〜60ドル払う必要が出てくる」

  • 「年収65,000ドルほどの中間層では、年間で2万ドル(約300万円)の追加負担になることもある」

KFF(全米の非営利保健研究機関)の推計では、平均114%の保険料増
まさに「補助金ありき」で成立していた保険加入層に、突然の“医療費ショック”が襲う形です。


過去とのつながり ― 民主党はなぜ「医療」で戦うのか?

The Daily では、過去の選挙戦略にも触れられていました。

  • 2017〜18年:共和党がオバマケア廃止を試みたとき、民主党は「あなたの保険を奪うのか?」と逆に選挙で勝利

  • 2018年中間選挙:民主党候補の半数以上が医療費をテーマにテレビ広告を出した

“This election is about health care.”
(この選挙は医療についての選挙だ)

とナンシー・ペロシ下院議長が語ったように、民主党にとって医療は国民の共感を得やすいテーマなのです。今回の政府閉鎖でも、同じ戦略が繰り返されています。


日本との比較に進む前に ― 「高齢者」と「現役世代」の違い

ここで注意したいのは、アメリカの保険制度は一枚岩ではないということです。

  • Medicare:高齢者・障害者向けの公的保険

  • Medicaid:低所得者向けの州運営保険

  • 民間保険

    • 雇用主が提供するもの(大企業勤めの人に多い)

    • 自営業や非正規の人向けに用意された オバマケア(Marketplace=保険市場)

つまり、今回の補助金問題は 「民間保険のうち、オバマケア(Marketplace)」 に限られます。


日本・オレゴンとの比較

―― Medicareとオバマケアは「別物」

以前のブログで紹介したように、私はオレゴンの友人から「Medicare Advantage(高齢者向け保険)でワクチン接種が自己負担ゼロだった」と聞きました。

この経験から「アメリカの医療は意外と負担が軽い?」と思った方もいるかもしれません。
しかし今回のシャットダウンで問題となっているのは、オバマケア(Marketplace)に加入する現役世代

つまり、

  • Medicare(高齢者向け)では補助が手厚いケースがある

  • しかしオバマケア(現役世代向け)は補助金の有無で負担が激変する

という大きな違いがあるのです。


日本にとっての教訓

―― 制度を政治の駆け引きにしない

  • 制度の安定性:突然の補助切れで負担が跳ね上がらないように

  • 格差の抑制:所得や地域による医療アクセスの差を最小限に

  • 政治利用の抑制:医療を政局の道具にしすぎないこと


❓Q&Aコーナー:「結局、何なの?」

Q1. アメリカの医療保険のシステムは?
→ 大きく3種類に分かれます。高齢者や障害者向けの「Medicare」、低所得者向けの「Medicaid」、そしてそれ以外の人々が加入する「民間保険」です。民間保険には、会社員が勤め先から提供されるタイプと、自営業者などが自分で契約するタイプがあり、その後者が「オバマケア(ACA Marketplace=保険市場)」です。ACAとはAffordable Care Act(医療保険制度改革法)の略で、オバマ政権下で導入されました。

Q2. 政府シャットダウンはなぜ起きたの?
→ 予算案にオバマケアの補助金を延長する条項を入れるかどうかで、民主党と共和党が真っ向から対立したためです。合意できなければ予算が成立せず、結果として政府機能が一部停止してしまいました。

Q3. 補助金が切れるとどうなる?
→ 現在の保険料が倍以上に跳ね上がる人が続出します。低所得者でこれまで保険料ゼロだった人が毎月数千円程度を負担する必要が出てきたり、中間層では年間数百万円単位の負担が増えることもあります。家計に直撃するため、大問題となっています。

Q4. 誰が一番影響を受ける?
→ 自営業や非正規で働く人など、オバマケア(Marketplace)を通じて保険に入っている人たちです。特に、州政府がMedicaidを拡張していない地域に住む人は、頼みの綱がオバマケアしかなく、影響は甚大です。

Q5. 以前紹介した「オレゴンの友人は自己負担ゼロだった」という話と何が違う?
→ その友人は高齢者向けのMedicareに加入していたため、自己負担が軽かったのです。今回問題になっているのは、現役世代が加入するオバマケア。制度も対象者も全く異なります。つまり「高齢者は守られているが、現役世代は補助金次第で負担が激変する」という構図です。

Q6. 日本の国民皆保険と何が違う?
→ 日本は原則として全員が必ず何らかの公的保険に加入でき、医療費の自己負担は3割(高齢者はさらに軽減)で、さらに高額療養費制度により上限もあります。アメリカは「保険に入れるかどうか」がまず壁になり、入れたとしても補助金がなければ非常に高額になるのが大きな違いです。

Q7. 日本にも同じようなリスクはある?
→ 無保険状態になるリスクはほぼありませんが、注意すべきは「制度外」の部分です。例えば新しいワクチンや先進医療などは保険が効かないことが多く、今後はこうした領域で自費負担が増えていく可能性があります。

Q8. 日本への教訓は?
→ 医療制度を安定して運営し続けること、格差を広げないこと、そして政治の道具にしないことです。アメリカのように「補助金が切れたら一夜にして家計が破綻する」という事態を避けることが、日本にとって最大の学びです。


結びに:知と学びをつなぐ習慣

アメリカのシャットダウンを追うと、医療費がいかに政治と生活を揺さぶるかが見えてきます。合間に耳を傾ける The Daily は、単なるニュース解説ではなく、記者の生の声を通して**「数字の裏にある人々の現実」**を浮き彫りにしてくれます。

英語のニュースを追うのは簡単ではありませんが、得られる視野は広く、臨床や制度理解にも生きてきます。
そんな積み重ねが読者の方に伝われば嬉しいですし、副産物として…英語の勉強にも本当におすすめです!


💬 「医療制度を政局の道具にせず、誰もが安心できる形で持続させる――
それが日本にとっての最大の教訓です。」

 

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次回の記事を楽しみにしてくださっている方には申し訳ありませんが…
しばしお待ちを。次は来週まで「待て!」です🐶。
その間、コーヒーでも飲みながらお待ちくださいね☕😊。

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