2025/10/16
帯状疱疹ワクチンと認知症リスク ― 最新研究と横浜市の定期接種制度から考える(Nature Medicine 2025年10月号)
本記事は、最新の査読論文と公的情報にもとづく一般向け医療解説です。個別の診断・治療の勧誘を目的とするものではありません。
1.研究の背景 ― 帯状疱疹と脳の健康
帯状疱疹は、水ぼうそうの原因ウイルス(VZV:水痘・帯状疱疹ウイルス)が神経に潜伏し、加齢やストレスなどを契機に再活性化して発症します。皮疹や痛みだけでなく、神経や血管に炎症を残す可能性が指摘されています。
近年、この再活性化が認知症の発症リスク増加と結びつく可能性を示す研究が相次いでおり、2025年10月号の Nature Medicine 掲載論文が大規模データで関連を補強しました。
2.Nature Medicine 最新報告(要点)
一次情報:Nature Medicine(2025)原著論文
- 対象は米国の電子カルテデータで、規模は約1億人。多変量補正を広く適用。
- 主な結果
- 帯状疱疹の再発がある群では、認知症発症リスクが約7〜9%上昇。
- ワクチン接種者では認知症リスクが有意に低下。生ワクチンで約33%低下、組換えワクチン(2回)で約27%低下。
- およそ10年で予防効果の減衰に伴い、認知症リスク低下の効果も薄れる傾向。
- 解釈:帯状疱疹の予防が、将来的な認知機能の保護に寄与する可能性。
※観察研究であるため、因果関係の確定には追加検証が必要です。
3.横浜市で始まった「65歳以上の定期接種」
2025年度から全国で帯状疱疹ワクチンの定期接種が開始され、横浜市でも助成制度が導入されています。制度の最新情報は公的サイトでご確認ください。
助成後の自己負担(目安):生ワクチン 4,000円(1回)、シングリックス 10,000円 × 2回。年齢、年度、医療機関により差が生じる場合があります。
制度の整理や受け方の詳細は、当院の関連記事もご参照ください。
▶ どちらの帯状疱疹ワクチンが良い?(助成開始のポイント)
4.接種を勧める理由と、65歳前の接種という選択肢
- 発症リスクは年齢とともに上昇。予防は早期ほど合理的。
- 研究では、再活性化の抑制と認知症リスク低下の関連が示唆。
- 効果は時間とともに減衰するため、免疫が保たれている時期の接種が現実的。
以上を踏まえ、65歳の定期接種は積極的に推奨します。さらに、60代前半や50代後半の自費接種も検討価値があります。後年の助成対象年齢で追加接種を組み合わせる設計も可能です。詳細は医師にご相談ください。
5.ワクチンの種類と選び方(要点)
ワクチン | 主成分・型 | 回数 | 持続 | 特徴 |
---|---|---|---|---|
生ワクチン(ビケン) | 弱毒化ウイルス | 1回(皮下注) | 約5年 | 1回で完結。免疫低下状態では適さない場合あり。 |
組換えワクチン(シングリックス) | 不活化抗原 | 2回(筋注、2か月以上の間隔) | 約10年以上 | 発症予防効果は高いが、一時的な倦怠感や発熱などの反応が出やすい傾向。 |
出典:厚生労働省 / 日本皮膚科学会ガイドライン2025
6.まとめ
- 大規模研究は、再活性化の抑制と認知機能低下リスクの低減を示唆。
- 横浜市の定期接種は原則受ける方向で検討。
- 65歳前からの接種も合理的な選択肢。個別事情に応じて医師と相談。
当院では、生ワクチンとシングリックスを取り扱っています。体調、既往、服薬状況を伺い、安全で適切なスケジュールをご提案します。
参考リンク
免責事項(医療広告ガイドライン対応)
本記事は最新研究と公的資料にもとづく一般的な医療情報の解説です。個別の診断・治療・予防方針は症状や体調により異なります。接種の可否、時期、種類の選択は必ず医師にご相談ください。助成制度や料金は改定される場合があります。最新情報は各自治体や公的機関の公式情報をご確認ください。