2025/12/23
【横浜・戸塚駅西口 徒歩10分/駐車場あり】
内科・循環器内科・糖尿病内分泌内科|戸塚クリニック
(院長:村松 賢一)
当院は「内科のかかりつけ」として、
高血圧・糖尿病などの生活習慣病や体調不良、
甲状腺を含む内分泌のご相談まで幅広く対応しています。
予約優先制ですが、予約なしでも受診可能です。
(予約をおすすめする理由は待ち時間を短くするためです。
混雑時はお待ちいただく場合がありますが、症状に合わせて柔軟に対応します)
症状が気になる方は、ご都合のよいタイミングでお越しください。
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マンジャロ®は心臓に良い薬ですか?
― 心筋梗塞・脳卒中・息切れ(HFpEF)との関係を、循環器内科医がやさしく解説します ―
「マンジャロに変えたほうが、心臓にいいんですか?」
診察室で、実際によく聞かれる質問です。
ネットやSNSでは「よく痩せる=心臓にも一番いい薬なのでは?」という印象を持たれることもあります。
結論から言うと、「どちらが上・下」ではなく、薬ごとに役割が違うという理解がとても大切です。
この記事は約3分で読めます。
⏱️ まず30秒でわかる要点まとめ
- ✔ 心筋梗塞・脳卒中などの「血管の病気」
→ GLP-1系の薬では、リスクを下げた研究が多く報告されています。 - ✔ マンジャロ®(チルゼパチド)
→ 少なくとも心筋梗塞や脳卒中を大きく増やす薬ではないと考えられています。 - ✔ 息切れ・むくみが目立つ心不全(HFpEF)
→ 肥満を伴う場合、マンジャロ®で症状改善が報告された研究があります。
① 心筋梗塞・脳卒中(血管の病気)との関係
■ GLP-1系の薬(例:オゼンピック® など)
心筋梗塞や脳卒中など「血管の病気のリスクを下げた」臨床研究が複数あります。
糖尿病があり、動脈硬化リスクが高い方では心血管リスク管理の一部として使われてきました。
■ マンジャロ®(チルゼパチド)
インスリン製剤(インスリン グラルギン)と比較した臨床試験では、心血管イベントが明らかに増える傾向は報告されていません。
「少なくとも心筋梗塞や脳卒中を大きく増やす薬ではない」と、現時点では理解されています。
※ この考え方は、インスリン製剤との比較試験(SURPASS-4)に加え、GLP-1受容体作動薬(デュラグルチド)との大規模心血管アウトカム試験(SURPASS-CVOT)などの結果を踏まえた、現在の医学的理解に基づきます。
※ 心血管イベントへの影響については、今後も検証が続いています。
「体重がよく減る薬 = 心臓にも一番いい薬」ではありません。
心臓の病気には、
- 血管が詰まる問題
- 心臓が硬くなる問題
- 体重・代謝による負担
など、複数の側面があります。薬も「得意分野」が違うのです。
② 息切れ・心不全(HFpEF)との関係
HFpEF(ヘフペフ)とは、心臓の押し出す力は保たれているのに、硬くなって広がりにくい心不全です。
🎈 風船でイメージすると…
🔴 健康な心臓:よく膨らむ柔らかい風船
🔵 HFpEFの心臓:硬くて膨らみにくい風船
このタイプの心不全では、体重増加や内臓脂肪が、息切れを悪化させる要因になります。
■ マンジャロ®とHFpEF
肥満を伴うHFpEF患者を対象とした大規模試験では、以下の報告があります。
- 心不全の悪化や心血管死を含む指標の低下
- 息切れなどの症状や生活の質(QOL)の改善
※ 肥満を伴うHFpEF患者を対象とした大規模臨床試験(SUMMIT試験)の結果に基づく報告です。
※ 効果には個人差があり、他の薬との直接比較試験はありません。
📌 【重要】保険適応と薬の使い分けについて
ここは非常に大切なお話です。
「心臓に良いなら使いたい」と思われるかもしれませんが、日本の公的医療保険には明確なルールがあります。
🏥 日本の保険診療のルール
- マンジャロ®
基本適応は「2型糖尿病」の治療薬です。 - ゼップバウンド®(同じ成分)
条件を満たした「肥満症」の治療薬です。 - 適応外使用
「心臓病予防のみ」「美容・ダイエット目的」での処方は保険適応外(自費)となり、副作用被害救済制度の対象外となる可能性があります。
👉 つまり、医学的なメリットがあっても、保険で処方できるかどうかは「糖尿病や肥満症の診断基準を満たすか」によって決まります。
③ こんな方は、一度主治医と相談を
- ☐ 心筋梗塞や脳卒中を起こしたことがある
- ☐ 息切れがあり「心臓が硬い」と言われた
- ☐ 体重増加が心臓に負担をかけていると言われた
- ☐ ネット情報が多く、どれが正しいかわからない
👉 自己判断で薬を選ぶのではなく、必ず医師と相談してください。
📌 副作用について
- 主な副作用:吐き気、食欲低下、下痢などの消化器症状が出ることがあります
- 症状の出方や程度には個人差があります
- 必ず医師の管理下で使用してください
よくある質問(簡単Q&A)
- Q. マンジャロ®の方が心臓に良い薬ですか?
- A. 「良い・悪い」ではなく役割が違います。
血管イベントの予防ではGLP-1系に研究の蓄積が多く、マンジャロ®は「少なくともイベントを大きく増やさない安全性」と体重・代謝面での効果が期待されます。 - Q. 心臓病があれば保険で使えますか?
- A. 原則として、心臓病のみでは保険適応になりません。
2型糖尿病の診断がある場合はマンジャロ®、肥満症の条件を満たす場合はゼップバウンド®など、診断名に応じた薬剤選択になります。
まとめ
- GLP-1系:血管イベントのリスク低下を示した研究が多い
- マンジャロ®:
- 心血管イベントを大きく増やす薬ではない
- 肥満を伴うHFpEFでは症状改善が報告されている
- 大切なのは「自分の心臓の状態」と「保険適応」の両面から考えること
不安がある方は、かかりつけ医・循環器内科にご相談ください。
参考文献(医師向け補足)
- Cardiovascular Outcomes with Tirzepatide versus Dulaglutide in Type 2 Diabetes (SURPASS-CVOT)
N Engl J Med. 2025
Link to NEJM - Tirzepatide versus Insulin Glargine in Type 2 Diabetes with Increased Cardiovascular Risk (SURPASS-4)
Lancet. 2021
Link to Lancet - Tirzepatide for Heart Failure with Preserved Ejection Fraction and Obesity (SUMMIT Trial)
N Engl J Med. 2025
Link to NEJM
