2025/12/30
【横浜・戸塚駅西口 徒歩10分/駐車場あり】
内科・循環器内科・糖尿病内分泌内科|戸塚クリニック
(院長:村松 賢一)
当院は「内科のかかりつけ」として、
高血圧・糖尿病などの生活習慣病や体調不良、
甲状腺を含む内分泌のご相談まで幅広く対応しています。
予約優先制ですが、予約なしでも受診可能です。
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少子化は「個人の努力不足」ではなかった。
医学誌Lancetが突きつけた3つの真実

こんな思いを抱えていませんか?
- 「自分の努力が足りないのでは」と自分を責めている
- 仕事と妊活の両立に限界を感じている
- 「少子化」のニュースを見るたびに息苦しさを感じる
横浜・戸塚の内科クリニック、院長です。
結論からお伝えします。
少子化や不妊は、「個人の意識」や「努力不足」だけでは説明できません。
2025年、世界最高峰の医学誌 The Lancet(ランセット) 系列誌は、少子化を①男性の健康、②女性の健康、③社会構造という3つの視点から分析し、「産めなかった人を責める説明は、科学的整理と必ずしも一致しない」という事実を示しました。
この記事では、その内容を内科医の視点から、できるだけ分かりやすく解説します。
結論:少子化は「産まない人が増えた」だけではない
少子化が語られるとき、「若者の意識が変わった」「価値観が多様化した」という言葉で片付けられることが少なくありません。
しかし、Lancetが発表した Low Birth Rate Series は、それだけでは説明が不十分であることを示唆しています。
少子化とは、「産めるはずだった可能性」が、
健康と社会の両面から削られていった結果である。
本来なら実現し得た妊娠の可能性が、健康や社会条件によって狭められている――医学的には、そう捉える方が自然なのです。
Lancetはこれを、以下の3つの層で整理しました。
① 男性の健康:見過ごされてきた「半分の真実」
まず、最も重要で、これまで十分に語られてこなかった事実です。
カップルの不妊の約半数で、男性側にも原因が関与するとされています。
Lancetのレビューでは、日本を含む西太平洋地域の不妊有病率は約23%と推計されており、世界平均(約18%)よりも高いことが示されています。その重要な寄与因子の一つが、精子の質(機能)の低下です。
精子濃度の長期低下という現実
図1:精子濃度の世界的低下(1973 vs 2018)
(出典:The Lancet, Male infertility Fig.1c データより作成)
論文では、Levineらのデータを引用し、過去約50年間にわたる精子濃度の低下が示されています。 解析期間(1973〜2018年)において、精子濃度の一貫した減少が示されています。
大きな減少傾向が続いていることが分かります。
重要なのは、これが「遺伝」や「体質」だけで説明できる問題ではない、と整理されている点です。
Lancetは、精子の質と関連しうる要因として、次を挙げています。
- 喫煙・過度なアルコール
- 身体活動の不足・肥満
- 環境汚染物質
- メンタルヘルスや飲酒を含む生活習慣上の要因
つまり男性不妊は、「男性の健康管理や生活習慣病予防が、社会的に後回しにされてきた影響」という側面も含んでいる可能性が指摘されているのです。
② 女性の健康:「産めないのは自己責任」への疑問
女性の妊娠力(妊孕性)は、「年齢」や「努力」だけで語られがちです。
しかしLancetは、女性の健康と妊娠力は個人の努力を超えた「二重構造」で決まると整理しています。

女性の健康は「個人の生活習慣(内側)」だけでなく、「社会・環境要因(外側)」によって大きく左右されます。(出典:The Lancet, Women’s health and female fertility Figure 1 を基に作成)
個人レベルの要因
- 食事・栄養
- 身体活動・睡眠・メンタルヘルス
- 体重、代謝、炎症、インスリン抵抗性
社会・環境レベルの要因
- 社会経済的状況(教育・収入など)
- 環境汚染物質
- 慢性的な社会的ストレス
論文は、「女性の健康は、身体的・心理的・社会的環境の総合的な結果である」と結論づけています。
これは、「産めないのは自己管理が足りないからだ」という説明が、医学的整理と一致しにくいことを示唆しています。
日本を含むアジア太平洋地域では、肥満や代謝異常だけでなく、環境汚染や長時間労働、メンタルヘルスなどが複合的に妊孕性(妊娠する力)に影響していることが指摘されています。
③ 社会構造:「産まない」のではなく「産めなくなる」社会
なぜ日本を含む東アジアで、これほど少子化が進んだのでしょうか。
Lancetの社会分析論文が提示したのが、「非対称な適応(Asymmetric Adaptation)」という考え方です。
教育水準の向上や女性の社会進出といった「近代化」は急速に進みました。一方で、長時間労働、育児支援、ジェンダー規範などの社会制度は同じ速度で変わりませんでした。
このミスマッチが、「産みたいと考える前に、産める条件が失われていく」状況に関連していると考えられています。日本のような超低出生率国では、以下のような要因が複雑に絡み合っていると指摘されています。
- コスト集約型の子育て規範(教育費・住宅費など)
- 住宅の不安定さ(housing precarity)
- 仕事と家庭の葛藤(work-family conflict)
結論:少子化は「健康と社会の複合的な課題」
Lancetのシリーズ全体が示唆しているのは、次の3つが同時に進行しているという事実です。
- 男性の健康低下(精子の質の低下と関連する要因)
- 女性への過剰な健康・心理的負荷
- 社会制度の適応遅れ
少子化は、個人のわがままでも、意識の問題でもありません。
社会全体と人々の健康が同時に弱っている「複合的な課題(あるいは複合疾患のような状態)」――そう捉える方が、科学的整理に近いと考えられます。
だからこそ、内科医として提案したいのは「健康管理から始めるプレコンセプションケア(将来の妊娠のための健康づくり)」です。
よくあるご質問(Q&A)
Q. 婦人科ではないのに、将来の妊娠について相談してもいいですか?
A. はい、もちろんです。
妊娠の土台は、栄養(貧血・ビタミンD)、甲状腺機能、血糖や代謝、体重、睡眠などの全身状態です。内科は、これら全身状態を評価し整える役割を担う診療科です。必要に応じて専門科と連携します。
Q. 男性(パートナー)は何を診てもらえますか?
A. 体重・血圧・血糖・脂質、喫煙や飲酒、睡眠やストレスなどを確認します。精液検査は泌尿器科へ紹介しつつ、内科では体調面のサポートを行います。
Q. 検査や費用はどれくらいですか?
A. 症状(疲れやすい、月経不順など)や既往がある場合は保険適用となることが多く、検査内容に応じた負担額となります。自費検査の場合は項目により1万円台からとなることがあります。
※受診の際は、マイナンバーカード(または資格確認証)をご持参ください。
※検査内容や適用可否により費用は変動します。詳細は受診時にご相談ください。
横浜・戸塚の診察室から伝えたいこと
もし今、妊娠や将来のことについて悩んでいるなら、どうか自分たちだけを責めないでください。
Lancetの論文は、その悩みが「個人の失敗」だけでは説明できないことを示しています。
内科クリニックとして、不妊治療そのものは行いませんが、その背景に関わりうる体の不調を見つけ、整えるお手伝いはできます。
まずは、日常の体調管理を相談する感覚で、ご自身とパートナーの健康状態について考えるところから始めてみてください。
参考文献
- The Lancet Regional Health – Western Pacific, Low Birth Rate Series
- Skerrett-Byrne DA, et al. Determinants of male fertility in the Western Pacific Region. The Lancet Regional Health – Western Pacific. 2025. DOI: 10.1016/j.lanwpc.2025.101716
- Yang J, et al. Women’s health and female fertility. The Lancet Regional Health – Western Pacific. 2025. DOI: 10.1016/j.lanwpc.2025.101710
- Yeung WJ, Abalos JB. Social determinants of low fertility in Asia. The Lancet Regional Health – Western Pacific. 2025. DOI: 10.1016/j.lanwpc.2025.101724
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としています。個別の症状については医師にご相談ください。
