2026/01/17
【横浜・戸塚駅西口 徒歩10分/駐車場あり】
内科・循環器内科・糖尿病内分泌内科|戸塚クリニック
(院長:村松 賢一)
当院は「内科のかかりつけ」として、
高血圧・糖尿病などの生活習慣病や体調不良、
甲状腺を含む内分泌のご相談まで幅広く対応しています。
予約優先制ですが、予約なしでも受診可能です。
(予約をおすすめする理由は待ち時間を短くするためです。
混雑時はお待ちいただく場合がありますが、症状に合わせて柔軟に対応します)
症状が気になる方は、ご都合のよいタイミングでお越しください。
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【心不全と糖尿病】合併が多い理由とSGLT2阻害薬の役割
―― 循環器×糖尿病の現場から見える「感覚のズレ」 ――

この記事のポイント(先に結論)
- 心不全の患者さんに糖尿病が多いのは、偶然ではありません
- 同じ患者さんを診ていても、循環器医と糖尿病医では「見え方」が違います
- SGLT2阻害薬は、そのズレを埋める大きなきっかけとなり、心不全治療の考え方を大きく前進させた薬です
※本記事は一般的な解説であり、特定の薬剤を一律に推奨するものではありません。実際の治療や処方は、合併症や腎機能などを踏まえ、主治医と相談の上で決定してください。(参照:一般社団法人 日本循環器学会)
当院では、心不全も糖尿病も、どちらも日常的に診療しています。
その立場で循環器系の学会や研究会に参加すると、休憩時間の雑談などでもはや「あるある」と言っていいほどよく耳にする言葉があります。
「心不全の患者さんって、本当に糖尿病の合併が多いですよね……」
これを聞くと、その場にいる循環器医たちは深く頷きます。
これは単なる印象論ではなく、心不全集団における糖尿病の併存はおおむね20〜40%程度(報告により幅があります)と報告されていることとも整合します。(参照:日本循環器学会 ガイドライン)
多くの循環器医にとって、この「合併の多さ」は痛いほどの実感なのです。
一方で、糖尿病診療を長くしている医師の中には、
「心不全の患者さんをたくさん診ている感覚は、正直あまりない」
と感じている方も少なくありません。
この感覚のズレは、どこから生まれているのでしょうか。
循環器医から見た「糖尿病 × 心不全(なぜ合併が多いのか)」
循環器医の立場から見ると、構図はとても明確です。
- 心不全患者さんでは糖尿病の併存が多い(20〜40%程度)
- 糖尿病があると
- 心不全を発症しやすい
- 入院・再入院が増える
- 生命予後が悪化しやすい
(糖尿病が心不全リスク・予後に関わるという方向性は多くの疫学・ガイドラインで一貫しています)
このため循環器の世界では、
「糖尿病は心不全の代表的な基礎疾患」
という認識が、すでに共通言語になっています。
なぜ糖尿病診療側では「心不全が多い感覚」が薄いのか
糖尿病診療ではどうしても、以下の数値や合併症に意識が向きがちです。
- HbA1c
- 血糖値
- 網膜症・腎症・神経障害
「息切れ・むくみ」を“糖尿病のせい”と片付けない
心不全は「症状が出てから(症候性になってから)」前面に出てくることが少なくありません。
しかし、「最近太ったかな(むくみ)」「運動不足かな(息切れ)」と見過ごされがちです。

これらの症状が目立ってきた段階で、患者さんは循環器へ紹介される。
すると糖尿病医の記憶には、「心不全の患者さんを多く診ている」という実感が残りにくくなります。
ここまでの話を整理すると
- 循環器医:心不全患者さんに糖尿病が非常に多いと日常的に実感
- 糖尿病医:心不全は症状が出てから循環器に紹介され、印象に残りにくい
- その結果:「合併が多い/多くない」という感覚のズレが生まれる
👉 このズレが、連携を難しくしてきました。
でも本当は「どちらかが手放す病気」ではない
心不全と糖尿病は、どちらか一方だけで完結する病気ではありません。
- 心不全が悪化すれば、血糖は乱れやすい
- 糖尿病が進行すれば、心不全は悪化しやすい
完全に双方向の関係です。
では、このズレを埋めたのは何だったのでしょうか。
この溝を埋めたのは何だったのか
―― SGLT2阻害薬という“価値観を前進させた薬” ――
答えは SGLT2阻害薬 です。
もともとは「糖尿病の薬」として登場しましたが、大規模臨床試験の流れの中で、以下のことが示されました。
- 血糖値の改善とは独立して
- 心不全入院リスクを減らす
そしてこの効果は、糖尿病の有無を問わず認められています。
現在では、心臓のポンプ力(駆出率:EF)の違いを問わず、主要な治療選択肢の一つ(心不全治療の重要な柱:foundational therapy)として位置づけられるようになりました。(参照:欧州心臓病学会 ESC Guidelines)
日本循環器学会/日本心不全学会の2025年改訂ガイドラインでも、HFrEF・HFmrEF・HFpEFといった“心不全のタイプ(駆出率分類)を問わず”、SGLT2阻害薬が治療選択の中核として推奨される流れが明確に示されています。
※ここでは「ステージA/B(リスク段階)にも一律に必須」と誤読されないよう、“タイプ(EF分類)を問わず”という表現に整理しています。予防・リスク段階での介入は、合併症や全体リスクを踏まえた個別判断がより重要になります。(参照:日本循環器学会)
▼ 関連解説:糖尿病・心不全治療薬(SGLT2/GLP-1)と合併症予防について
それでも残る、診療科の「感覚のズレ」
一方で糖尿病診療の現場では、これまでSGLT2阻害薬が
- 血糖管理・体重管理を主目的に使われてきた薬
という歴史的背景もあります。
その結果、心不全がはっきりしてから循環器にバトンが渡る構図が続いてしまうことがあります。
当院が大切にしている考え方
当院では、SGLT2阻害薬を「どちらの科の薬か」で考えません。
- 糖尿病の患者さんを、心不全の目で診る
- 心不全の患者さんを、糖尿病の目で診る
その接点にある薬として位置づけています。
横浜市戸塚区で、心不全と糖尿病をまとめて相談できる窓口をお探しの方へ
戸塚クリニック(内科・循環器内科・糖尿病内科)では、
連携を前提に、同時に評価・相談できる体制を整えています。
患者さんからよくある質問
- Q1. 心不全がない糖尿病患者でも、関係ありますか?
- はい。心不全は症状が出る前の期間が長い病気です。
糖尿病の方では、そのリスクが高いことが分かっています。 - Q2. SGLT2阻害薬は必ず使う薬ですか?
- いいえ。年齢、腎機能、生活状況を踏まえ、メリットと注意点を説明した上で選択します。(参照:日本循環器学会)
- Q3. 心不全になったら主治医は変わりますか?
- 必ずしも変わりません。
当院では同時に診ることを大切にしています。 - Q4. 副作用(尿路感染など)は心配ですか?
- SGLT2阻害薬では、尿路感染や性器感染のリスクが少し上がることがあります。
ただしその多くは軽症で、早めに気づいて対応すれば大事に至らないことがほとんどです。
陰部のかゆみ・痛み、排尿時の違和感、あるいは強いだるさ・吐き気・食事がとれないなどの症状が続く場合は、早めにご相談ください。
また、体調不良時(発熱・下痢・食欲不振、脱水が疑われる時など)は薬の種類によっては一時的な中止が必要な場合もあるため、事前に主治医から「シックデイ(体調不良時)の対応」を聞いておくか、迷ったらすぐにご連絡ください。 - Q5. 糖尿病だけ通院していますが、循環器も受診した方がいいですか?
- もし「息切れ・むくみ」などの症状があれば、早めの評価が推奨されます。
まずは主治医の先生に相談し、必要に応じて循環器内科で評価を受けるのが安心です。当院でも、かかりつけ医との連携を大切に診療しています。
最後に
「心不全の患者さんに糖尿病が多い」という事実は、診療科を超えて同じ方向を見る必要性を教えてくれます。
戸塚クリニックでは今後も、循環と代謝を一緒に診る医療を続けていきます。
「どの科に相談すべきか」で迷う前に、
一度ご相談ください。
次回予告
- SGLT2阻害薬は誰に、いつから使うべきか
- 糖尿病患者さんで見逃されやすい心不全の初期サイン5つ
