2026/01/27
【横浜・戸塚駅西口 徒歩10分/駐車場あり】
内科・循環器内科・糖尿病内分泌内科|戸塚クリニック
(院長:村松 賢一)
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【2026年1月時点】帯状疱疹ワクチンで認知症リスク減?自然実験研究まとめ|横浜・戸塚
横浜・戸塚の戸塚クリニック院長の村松賢一です。
本記事は、Nature・Cell・Lancet Neurology などの国際的医学誌と、日本の公的資料をもとに、 「あとから後悔しない判断材料」になるよう、事実関係を丁寧に整理したものです。

■ まず結論(忙しい方へ:約30秒で読めます)
帯状疱疹ワクチン接種は、認知症リスクが低い“方向”と関連する——。
その関連は、観察研究だけでなく、自然実験(因果に近い設計)でも、複数国で一貫して示されました。
- 「打てば必ず防げる」という話ではありません(因果は断定できない)
- それでも、国・解析手法を変えても保護的な方向が揃ってきたのは重要です
- 日本では50歳以上で接種可能。ただし50代は原則自費になりやすい(現実的な論点)
※本記事は「ワクチンが認知症を予防・治療する」と断定するものではありません。現時点で言えるのは、 研究設計の強い解析でも“リスクが低い方向の関連(シグナル)”が繰り返し示された、という整理です。
■ そもそも「自然実験」とは?

「ワクチンを打った人は健康意識が高いから、たまたま認知症が少ないだけでは?」
——この疑問(healthy vaccinee bias)が、これまでの観察研究の最大の弱点でした。
自然実験は、この偏りを減らす発想です。
たとえば「公費対象が切り替わる誕生日の境目」があると、境目の前後の人は生活背景が近いのに、 制度の都合で接種率だけが急に変わることがあります。
この“境目”を利用すると、恣意的な差が入りにくくなり、観察研究の中では因果に近い推定が可能になります。 こうした設計の研究が英国(Nature)やカナダ(Lancet Neurology)で相次いで発表され、再現性が積み上がりました。
■ 研究の全体像:国を変えて「同じ方向」が積み上がってきた
このテーマは「1本の研究で騒がれている」わけではなく、再現(replication)が積み上がっている点が重要です。

① Nature(2025・ウェールズ等):自然実験で“方向”を示した
- 追跡:約7年
- 新規認知症:絶対差 3.5 percentage points 低下(95%CI 0.6–7.1、p=0.019)
- 相対差:約20%低下(95%CI 6.5–33.4)
- 仕組み:誕生日境界(例:1933/9/2)による制度差を利用
- 性差:女性でより強い方向が示唆
※接種率の変動幅は地域により異なりますが、解析上、境界で明確な差(ジャンプ)が生じたデータを用いています。
② Lancet Neurology(2026・カナダ):自然実験が“別の国でも再現”
- 追跡:約5.5年
- 新規認知症:絶対差 2.0 percentage points 少ない(95%CI 0.4–3.5、p=0.012)
- 頑健性:別の解析(感度分析)でも同じ保護的方向で再現(p=0.025)
- 仕組み:誕生日境界(1945/1946)を利用
- 性差:女性でより明確、男性は不明瞭
※「男性で効果なし」と断定は不可(有意差が明確でない解析がある、という整理が正確)
上記の自然実験で主に扱われたのは、生ワクチン(Zostavax)です。
日本で主流の不活化(シングリックス)について、「認知症リスク」まで直接証明した研究ではありません。
現時点の誠実な整理は——
「不活化でも同等以上が期待され得るが、直接検証は今後」です(断定はしません)。
③ Cell(2025):病期別に“方向が揃う”ことを詳細に(観察解析)
帯状疱疹ワクチン接種と、認知症の各段階(MCI→認知症→死亡)を追跡し、 一貫して「接種群のほうが良い方向」の結果が報告されました。
- MCI(軽度認知障害)の新規診断:
絶対差 3.1 percentage points 低下(95%CI 1.0–6.2、p=0.007) - 認知症による死亡:相対リスク 29.5% 低下(方向)
- 全死亡:相対リスク 22.7% 低下(方向)
- サブ解析(女性):
MCI:11.6 points 低下(95%CI 6.2–17.0)
認知症死亡:52.3% 低い(95%CI 9.2–97.9)
※重要:これらは主に観察データ解析であり、因果を100%断定するものではありません。 ただし、病期をまたいで方向が揃うことは、臨床的に無視しにくい「シグナル」です。
- percentage points(ポイント差):割合そのものの差。例:10%→8%は2pp
- CI(信頼区間):推定のブレの範囲
- p値:偶然で説明できる可能性の指標(小さいほど偶然では説明しにくい)
Lancet補足の略語(必要な方だけ):
RD(回帰不連続)、SDiD(合成DiD)、SCM(合成コントロール)。
Lancetは複数手法で結果を検証し、「解析法を変えても同じ方向」を確認しています。
■ なぜ“皮膚の病気”のワクチンが“脳”に関係するのか(仮説)

ここは現時点では仮説です(断定はできません)。
- VZV再活性化の抑制 → 神経炎症・血管障害の連鎖を減らす可能性
- 免疫老化・慢性炎症の制御(免疫のトレーニング効果)が関与する可能性
※今後、機序研究・前向き研究でさらに検証が進む領域です。
■ 50代に伝えたい現実:「推奨」ではなく「選択肢」だが、盲点がある

私は「50代は必ず打つべき」とは言いません。
ただし、50代が“考える価値のある年代”である理由はあります。
- 帯状疱疹(VZV再活性化)のリスクは、一般に中年以降で上がりやすい
- 認知症は症状が出る前から進行することが多く、予防的介入は一般論として「早いほど有利」になりやすい
一方で大切な距離感:
自然実験研究の中心は70代前後です。50代の議論は、研究結果と疫学的流れを踏まえた“前倒しの合理性”であり、 確定した推奨ではありません。
そして現実的な盲点: ✅ 50代は「定期接種前」で、原則自費になりやすい(費用で迷いやすい)
■ 横浜市の制度:年度をまたいでも古く見えにくい整理
制度は自治体で異なり、年度ごとに更新されます。以下は横浜市の公開情報(2026年1月13日更新)に基づく整理です。
- 定期接種は例年7月頃開始(年度ごとの案内で確定)
- 65歳以上を中心に対象(経過措置として年次指定あり)
- 60–64歳の一部(1級相当の免疫機能障害など)が対象になる枠がある
自己負担の目安(横浜市・公費の場合の例):
- 生ワクチン:4,000円
- シングリックス:10,000円/回(2回で20,000円)
自治体差があり、自己負担額は数千円〜22,000円程度と幅があります(例:上限22,000円の自治体あり)。
予診票は6月頃に発送される案内。非課税世帯等で免除制度があります。最終的な対象・費用は、必ず自治体の公式案内でご確認ください。
■ 「1月末までに1回目 → 3月中に2回目」が大事になる“ケース”がある
不活化(シングリックス)は2回接種が基本で、原則2か月以上あけます。
公費の対象期間や年度運用の条件によっては、自治体によって「2回目が対象外になり得る」など実務上の論点が生じます。
「年度内に2回完了が条件になる方」は、開始が遅いと間に合わない可能性があるため、
1月末までに1回目 → 3月中に2回目を一つの目安として考えるのが実務的です。
※対象・解釈は自治体・年度で変わるため、個別確認が必要です。
■ まとめ:いま言える「誠実な結論」
- ワクチンで認知症を必ず防げる、とは言えません(因果は断定できない)
- ただし、複数国で自然実験まで含めて一貫した“保護的シグナル”が出ています
- 生活習慣(運動・睡眠・血圧・糖尿病管理)に加えて、「ワクチン」というカードを選択肢として持つ価値は十分にあり得る
——これが現時点で最も誠実な整理です。
FAQ(よくある質問)
Q1. 打てば認知症にならないんですか?
いいえ。因果を断定できる段階ではありません。
ただし、複数国の研究で一貫して“リスクが低い方向”が出ており、自然実験研究もあるため、無視できないシグナルとして整理されています。
Q2. 自然実験が強いのはなぜ?
健康意識の差(healthy vaccinee bias)を減らしやすいからです。
誕生日の境目で対象が分かれるため、恣意的な差が入りにくい設計です。
Q3. シングリックスと生ワクチン、どっち?
帯状疱疹の予防効果は不活化(シングリックス)が高いと報告されています(添付文書・厚労省資料等)。
ただし「認知症リスク」について、生ワクチン研究の結果を不活化にそのまま当てはめて断定はできません。
合理的には「期待はあり得るが、直接検証は今後」という整理が誠実です。
Q4. 50代で打つ意味はありますか?
「必ず打つべき」とは言いません。
将来を見据えて“前倒しで検討する”合理性はありますが、研究の中心は70代前後です。費用・副反応・持病を含めて個別判断が良いです。
Q5. 副反応は?
接種部位の痛み・腫れ、発熱、倦怠感などが起こり得ます。
重い副反応はまれですがゼロではないため、持病や免疫状態を踏まえて判断します。
Q6. 「1月末までに1回目」ってなぜ?
2回接種で2か月以上あけるためです。
「年度内2回完了が条件になる方」は、開始が遅れると2回目が対象外になる可能性があるため、実務上の安全目安として提示しています(自治体差あり)。
参考文献(一次資料中心/解説は補助)
- Nature (2025)
A natural experiment on the effect of herpes zoster vaccination on dementia
(DOI: 10.1038/s41586-025-08800-x) - Lancet Neurology (2026)
Herpes zoster vaccination and incident dementia in Canada: an analysis of natural experiments
(DOI: 10.1016/S1474-4422(25)00455-7) - Lancet Neurology Supplementary appendix (PDF)
- Cell (2025)
The effect of shingles vaccination at different stages of dementia disease course
(DOI: 10.1016/j.cell.2025.11.007) - CIDRAP :解説(一次データの補助)
- 横浜市:成人の予防接種(帯状疱疹) :2026年1月13日更新情報
※外部リンクは年度更新やURL変更があり得ます。検索で公式ページに到達できるよう、文献名を具体的に記載しています。
