2025/10/29
💊 マンジャロ(チルゼパチド)増量時に「抜け毛」が起きることはある?
マンジャロ(チルゼパチド)を使用している方から、
「増量してから髪が抜けやすくなった気がする」というご相談を受けることがあります。
結論から言うと、一部の方に一過性の抜け毛が見られることがありますが、薬そのものの直接的な毒性ではなく、体重減少や代謝変化に伴う一時的な反応と考えられています。
🧠 なぜ抜け毛が起きるの?
GLP-1/GIP受容体作動薬(マンジャロやオゼンピックなど)を使用すると、
食欲が抑えられ、比較的短期間で体重が減少することがあります。
この「急激な体重変化」により、髪の毛の成長サイクルが一時的に休止期へ移行することがあり、
これを**休止期脱毛(telogen effluvium)**と呼びます。
つまり、代謝や栄養バランスの変化に伴い、一時的に髪が抜けやすくなる現象で、
多くは数か月で自然に改善する傾向があります。
📊 発生頻度はどのくらい?
臨床試験(SURMOUNT・SURPASSシリーズなど)では、
- 
チルゼパチド群:約4〜5%
 - 
プラセボ群:1%未満
で脱毛(hair loss)の報告がありました。 
この差から、体重減少や栄養変化による一過性脱毛の影響が示唆されています。
ただし、重度や長期に続く例はまれです【NEJM 2023, JAMA Dermatology 2024】。
📜 添付文書・海外報告の位置づけ
2025年現在、日本の添付文書(武田薬品・イーライリリー社「マンジャロ皮下注」改訂版)では、
「脱毛」は主要な副作用項目としては記載されていません。
一方で、米国FDAや欧州医薬品庁(EMA)の有害事象データベースでは、
「Hair loss」「Shedding」などの報告が一定数見られ、
海外では臨床現場で注意喚起が進んでいる段階です。
🍎 対策とケアのポイント
抜け毛は「体重減少に伴う一時的な身体の適応」として起こることが多く、
以下の工夫で改善をサポートできます。
- 
減量ペースを緩やかに(1週間あたり0.5〜1kg以内を目安)
 - 
たんぱく質・鉄・亜鉛・ビタミンB群をしっかり摂取
 - 
睡眠・ストレス管理も大切
 - 
多くは3〜6か月で自然に改善する傾向あり
 
なお、
- 
円形脱毛や斑状脱毛のように部分的に抜ける場合
 - 
半年以上続く場合
 - 
かゆみ・痛みなどの皮膚症状を伴う場合
 
には、皮膚科での診察をおすすめします。
⚖️ 医師としての見解
抜け毛は見た目の変化として不安を感じやすい症状ですが、
多くの場合は薬の副作用というより体が新しい代謝バランスに適応しているサインです。
焦らず、栄養とペースを整えながら様子を見ていくことで、
多くの方は自然に回復していきます。
気になる場合は遠慮なく医師にご相談ください。
📚 参考文献
- 
The New England Journal of Medicine (2023). SURMOUNT-1/SURPASS trials.
 - 
JAMA Dermatology (2024). “Hair Loss Associated with GLP-1 Receptor Agonist Therapy.”
 - 
FDA FAERS Public Dashboard (2024). “Tirzepatide—Hair Loss Reports.”
 - 
武田薬品工業/イーライリリー「マンジャロ®皮下注 添付文書」(2025年改訂版)
 
🔖 まとめ
| 項目 | 内容 | 
|---|---|
| 発現時期 | 増量期・体重急減期 | 
| 頻度 | 約4〜5%(一過性) | 
| 主因 | 急激な体重減少・栄養変化 | 
| 薬そのものの作用 | 直接的毒性は示されていない | 
| 回復 | 数か月で自然改善することが多い | 
💬 まとめメッセージ
「マンジャロの増量後に抜け毛が見られることはありますが、
その多くは一時的な体の反応で、時間とともに落ち着いていきます。
栄養・休養・ペースの3つを整えながら、無理のない減量を心がけましょう。」
