2025/12/11
【横浜・戸塚駅西口 徒歩10分/駐車場あり】
内科・循環器内科・糖尿病内分泌内科|戸塚クリニック
(院長:村松 賢一)
当院は「内科のかかりつけ」として、
高血圧・糖尿病などの生活習慣病や体調不良、
甲状腺を含む内分泌のご相談まで幅広く対応しています。
予約優先制ですが、予約なしでも受診可能です。
(予約をおすすめする理由は待ち時間を短くするためです。
混雑時はお待ちいただく場合がありますが、症状に合わせて柔軟に対応します)
症状が気になる方は、ご都合のよいタイミングでお越しください。
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公開日:2025年12月10日
「血液検査だけでがんは分からない」腫瘍マーカーの落とし穴とコストの話|横浜市戸塚区
こんにちは。横浜市戸塚区の「戸塚クリニック」院長です。
12月に入り、年末に向けて健康診断や人間ドックを受けられる方も多い時期ですね。
戸塚駅周辺で健診やがん検診をお考えの方から、診察室でも本当によくいただくご相談があります。
- 「オプションで腫瘍マーカーをつけた方が安心ですか?」
- 「血液検査だけでがんが分かる、検査はありませんか?」
お気持ちは痛いほど分かります。胃カメラや大腸カメラのような負担のある検査よりも、採血だけで済むなら、それが一番良いに決まっています。
しかし、先日(2025年12月2日)の米紙 The New York Times に、非常に考えさせられる記事が掲載されました。
今日はその最新ニュースと、当院が考える「本当に意味のあるがん検診」について、「医学的なリスク」と「経済的なコスト」の両面からお話しします。
1. 「陰性だったのに…」米国の最新事例が教えるリスク
今、アメリカでは「Galleri(ガレリ)」と呼ばれる、一度の採血で50種類以上のがんを検出できる可能性があるという検査が話題です。
これは MCED(多がん種早期検出)検査 に分類されます。FDA(アメリカ食品医薬品局)の正式承認前ですが、すでに約42万件以上利用されていると報じられています。
しかし、記事ではこんな“現実”も紹介されていました。
米国のある消防署で、約500人の消防士がこの血液検査を受けました。
結果のほとんどは「陰性(異常なし)」でしたが、その後の約20か月のあいだに、そのうち14人でがんが見つかりました。
その中のお一人(40代後半)は、陰性という結果に安心し、本来受ける予定だった大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を1年以上先延ばしにしてしまいました。
結果として、腹痛で病院を受診したときには、すでに「ステージ4の大腸がん」と診断されてしまったのです。
「血液検査で異常なし → 安心して確実ながん検診を受けない」という「偽の安心感」が、命取りになるリスクがあることが、よく分かる事例です。
この検査は将来的に有望な技術ではありますが、現時点では「通常の健診の代わりに使えるほどのエビデンス(確実な証拠)は足りない」というのが、医学的な冷静な評価です。
ある専門家はこの状況を、「飛行機を作りながら飛ばしているようなもの」と表現しています。
2. 日本でも起きている「腫瘍マーカー」の経済的リスク
日本の人間ドックでも、CEA や CA19-9 といった「腫瘍マーカーセット」がオプションとして用意されているのをよく見かけます。
しかし、日本を含む多くの国の医学ガイドラインでは、共通してこう結論づけています。
「腫瘍マーカーは、健康な人のスクリーニング(がん探し)には適していない」
これは医学的な問題にとどまりません。
「患者さんの時間とお金」、そして「日本全体の医療費」という意味でも、大きな影響を持つテーマです。
よくある「負の連鎖」パターン
私が日々の診療で感じる、典型的な流れを整理してみます。
-
- 自費検査でパニックに
人間ドックのオプション(数千円〜1万円前後 ※医療機関により幅があります)で腫瘍マーカーを追加。結果表に「基準値よりやや高め」と書かれているのを見て、不安で眠れなくなる。
- 自費検査でパニックに
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- 保険診療へ移行(ここからは公費も投入)
「もしかしてがんでは?」という不安から、クリニックや病院を受診。
ここから先は保険診療(自己負担は1〜3割、残りは税金と保険料)になります。医師も「異常値」を放置するわけにはいかず、念のためにCT、MRI、超音波、内視鏡検査などを組み合わせて精密検査を行います。
- 保険診療へ移行(ここからは公費も投入)
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- 結果は「異常なし」
喫煙、良性のポリープ、体質、軽い炎症など、がん以外の理由で数値が上がっただけ(偽陽性)と判明。「がんではない」と分かり、一安心ではありますが…。
- 結果は「異常なし」
- 残ったのは「負担」だけ?
患者さんは仕事を休んで、何度も病院に足を運び、交通費と時間を費やしました。
一方で、国(社会全体)としては、本来必要なかったかもしれない検査に、貴重な医療費(税金・保険料)が使われています。
例えば、偽陽性による追加の精密検査1件あたり、数万円規模の公費が投入されるケースも少なくありません。
「過剰診断」はお金と時間も奪う
過剰診断(Overdiagnosis)とは、本来は一生症状を出さないような「おとなしいがん」や、がんではない変化まで見つけてしまい、結果として不要な検査や治療につながってしまうことを指します。
日本はすでに高齢化が進み、「医療費をどう持続可能にするか」が大きな社会課題になっています。
その中で、「医学的なメリットが限られている検査」のために、患者さんご自身の時間とお金、そして社会全体の医療資源を使ってしまうことは、本当に望ましいのか?
これは、私たち一人ひとりが考えるべきテーマだと私は思います。
3. 当院が推奨する「王道」の検診
では、横浜市戸塚区で健診・がん検診を受けるとき、何を大切にすればよいのでしょうか。
私ども「戸塚クリニック」が大切にしているのは、とてもシンプルです。
「科学的に、がんによる死亡率を下げることが
証明されている検査」を、きちんと受ける。
具体的には、次のような検査です。
- 胃がん
→ 胃カメラ(上部消化管内視鏡検査) - 大腸がん
→ 便潜血検査(大腸からの目に見えない出血を調べる)
+陽性なら、必ず大腸内視鏡検査(大腸カメラ) - 肺がん
→ 胸部レントゲン(胸部X線検査)
※喫煙歴が長いなど高リスクの方には、低線量CTを検討することもあります。 - 乳がん・子宮がん
→ 乳がん:マンモグラフィ(乳房X線検査)
子宮頸がん:子宮頸部細胞診、HPV検査など
これらは、血液検査だけと比べると、準備や身体的負担、時間的コストがかかります。
それでも世界中で推奨されているのは、大規模な研究で「がんによる死亡を減らす効果」が証明されており、費用対効果(コストパフォーマンス)の面でも優れているからです。
4. よくあるご質問(FAQ)
〜戸塚でよく聞かれる「2つの質問」〜
A. 残念ながらそうとは言えません。
「腫瘍マーカーが正常 = がんではない」とは言えません(見逃し・偽陰性)。
逆に、がん以外の理由で「高い」と出ることも多く(偽陽性)、その結果、不要な精密検査や不安な時間が次々と発生し、最終的に「何もなかった」となるケースも珍しくありません。
そのため当院では、「安心のためだけの腫瘍マーカー追加」は、原則としておすすめしていません。
(※ただし、慢性肝炎や肝硬変などの持病がある方や、特定のリスクをお持ちの方については、医師の判断で定期的に検査を行うことが推奨される場合があります。)
A. 年齢・リスクに応じた「王道」が最優先です。
年齢・性別・家族歴・持病によって優先度は変わりますが、多くの方にとって特に重要なのは、「大腸がん検診(便潜血)」「胃がん検診(胃カメラ)」「(女性の)乳がん・子宮頸がん検診」です。
「自分の年齢・リスクだとどれを優先すべき?」「職場健診だけで足りている?」といった疑問がある方は、流行りの検査ではなく、まず王道の検査について一緒に整理していきましょう。
戸塚で「意味のある健診」を
「血液検査だけでがんがわかればいいのに…」というお気持ちは、私もよく理解しています。
しかし、不確実な検査に飛びついた結果、患者さんご自身の時間とお金、そして社会全体の医療資源(税金・保険料)を浪費してしまうことは、誰にとってもプラスではありません。
横浜市戸塚区で健診・がん検診をご検討の方には、ぜひインターネット上の広告や「最新」「革命的」といった言葉に振り回されず、「本当に命を守ることにつながる検査」を賢く選ぶことを大切にしていただきたいと考えています。
当院は、流行の検査を安易に勧めるのではなく、内視鏡検査や超音波検査(エコー)、必要に応じた画像検査(CT・MRI等)を組み合わせ、医学的に正しく、かつムダの少ない健診プランをご提案します。
健診結果の見方や、「今の自分にとって必要な検査はどれか?」というご相談も歓迎です。
医学的に正しい選択と、未来の自分の時間・お金を守る選択を、ぜひ一緒に考えていきましょう。
※ご注意
本記事の内容は一般的な医学情報であり、個々の検査の必要性は、年齢・持病・家族歴・生活習慣などによって異なります。具体的な検査内容やタイミングについては、診察の際にご相談ください。
ご予約・アクセス
戸塚クリニック
〒244-0003 神奈川県横浜市戸塚区矢部町649
JR・横浜市営地下鉄「戸塚駅」
西口より 徒歩10分(駐車場あり)
がん細胞が産生する物質や、がんに対する体の反応で増える物質。主に「すでに見つかったがん」の治療効果判定や再発チェックに使われ、早期発見の精度は高くない。
血液などを用いて、複数の種類のがんを同時にスクリーニングしようとする新しい技術。まだ研究段階または一部の自費診療として提供されており、標準的ながん検診とは位置づけられていない。
治療の必要がないような進行の遅い「おとなしいがん」や、がんとは言えない変化まで「病気」として見つけてしまい、結果として不要な検査・治療につながること。
実際にはがんではないのに、検査で「陽性(異常あり)」と判定されてしまうこと。不要な再検査や不安、医療費増大の原因となる。
実際にはがんがあるのに、検査で「陰性(異常なし)」と判定されてしまうこと。発見が遅れ、進行した状態で見つかるリスクがある。
