2026/01/22
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内科・循環器内科・糖尿病内分泌内科|戸塚クリニック
(院長:村松 賢一)
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GLP-1薬の消化管副作用はなぜ起こる?
―― 吐き気・下痢の理由を最新研究(JCI 2026)から医師が解説 ――
🔍 冒頭ざっくり解説(この記事の結論)
- GLP-1薬で最も多い副作用は 吐き気・下痢 です
- 多くは 使い始めや増量期に一時的に出て、徐々に軽くなります
- 「気持ち悪くなるから痩せる」のではなく、食欲を抑える作用と吐き気の回路は、医学的には分けて考えられています
- 薬ごとの副作用の出やすさには一定の傾向はありますが、決定的な差とは言えません
- 強い嘔吐、激しい腹痛、黄疸が出た場合は 早めの受診が必要 です
→ 仕組みを知り、適切に使えば、過度に怖がる必要はありません
オゼンピック、ウゴービ、リベルサス、マンジャロなどのGLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)は、糖尿病や肥満症治療において重要な役割を担っています。一方で、「吐き気や下痢はどのくらい起こるのか」「薬によって副作用に違いはあるのか」といった不安を感じる方も少なくありません。
GLP-1薬の副作用として最も多いのが「吐き気」「下痢」です。しかし、その多くは薬の作用機序と関連した予測可能な反応であり、適切に管理すれば過度に恐れる必要はありません。本記事では、2025〜2026年の最新の比較試験・メタ解析と、Journal of Clinical Investigation(JCI)総説の知見をもとに、GLP-1薬の消化管副作用について医学的に整理します。
1. GLP-1薬の主な消化管副作用
GLP-1受容体作動薬で最も多く報告されている副作用は、吐き気、嘔吐、下痢、便秘といった消化管症状です。これらは多くの研究で、以下の特徴が示されています。
- 用量依存的であること(量が増えると出やすい)
- 治療導入期や増量期に集中すること
- 多くは軽度から中等度で、治療を継続するうちに軽減すること
まれではありますが、胃不全麻痺、胆石、胆嚢炎、腸閉塞といった合併症が報告されることもあります。米国糖尿病学会(ADA)および欧州糖尿病学会(EASD)のガイドラインでも、GLP-1薬に伴う消化管副作用と胆道系イベントのリスク増加が指摘されています。
2. 副作用のメカニズム:gut–brain axisが鍵

GLP-1薬は、腸管運動を調整し、胃排出を遅らせることで満腹感を強めます。その結果、食後の膨満感や吐き気が生じることがあります。また、腸管分泌や蠕動の変化により、下痢や便秘が起こる場合もあります。
近年の研究で特に重要視されているのが、中枢神経、特に脳幹(NTS・AP領域)への作用です。GLP-1薬は食欲を抑制する一方で、同じ中枢神経経路を介して吐き気や嘔吐にも関与します。

2026年のJCI総説では、GLP-1の作用が中枢神経を介して媒介されており、「満腹感を生じさせる回路」と「嫌悪感(吐き気)を生じさせる回路」が部分的に分離して存在することが示されました(上図参照)。これは、「気持ち悪くなるから痩せる」という単純な理解が、現在の医学では支持されていないことを意味します。
3. 薬剤間の差について(あくまで傾向として)
薬剤の種類、用量、患者さんの背景によって、副作用の出方には差があります。比較試験やネットワークメタ解析では、以下の傾向が報告されています。
- セマグルチド、チルゼパチド:吐き気・下痢がやや多い傾向
- デュラグルチド、リキシセナチド:比較的忍容性が高い傾向
- エキセナチド:嘔吐がやや目立ちやすい傾向
ただし、これらの差は試験ごとにばらつきがあり、統計的に明確な差が示されない場合も少なくありません。
近年のリアルワールドデータ(Crisafulli et al., Annals of Internal Medicine, 2025)では、デュラグルチド、セマグルチド、チルゼパチドで消化管副作用リスクは概ね同程度であり(HR 0.96–1.07、いずれも有意差なし)、重症イベントの頻度にも明確な差は認められていません。
そのため、現時点では「明確な優劣」ではなく、「傾向としての違い」と理解するのが適切です。
4. 中枢作用の違いと副作用(仮説レベル)
半減期や体重減少効果などを踏まえると、セマグルチドやチルゼパチドは中枢神経への作用が比較的強く、持続的と考えられています。一方、デュラグルチドなどは中枢刺激が比較的穏やかと推定されています。
こうした「脳内での効き方の違い」が、副作用プロファイルの差に一部関与している可能性が高いと考えられていますが、中枢刺激の強さと消化管副作用の頻度が直接的な因果関係として証明されているわけではありません。あくまで、近年の基礎研究・総説から強く示唆されている仮説の段階です。
5. 作用時間による典型的な傾向
短時間作用型(エキセナチド1日2回製剤、リキシセナチド)では胃排出抑制が強く、吐き気が目立ちやすい傾向があります。一方、長時間作用型(デュラグルチド、セマグルチド)では、下痢や便秘が主体となりやすいという典型的な傾向が報告されています。
6. 重篤な合併症のリスク
胃不全麻痺、腸閉塞、胆石、胆嚢炎といった重篤な合併症は低頻度です。現時点の臨床研究では、「特定のGLP-1薬だけが極端に危険」と言える明確なエビデンスはありません。
一方で、胆道系イベントについては、用量や体重減少量、既存疾患(例:胆石の既往や肥満度が高い場合)を考慮した慎重な評価が現在も続けられています。
7. 管理策:多くはコントロール可能

GLP-1薬による消化管副作用の多くは、以下の対策によって軽減・消失します。
- 低用量からの漸増(徐々に体を慣らす)
- 小分けの食事(一回の量を減らし、回数を分ける)
- 高脂肪食の回避(消化に悪いものを避ける)
- 必要に応じた対症療法(整腸剤や制吐剤など)
多くの場合は自己限定的(自然に治まるもの)ですが、症状が持続したり重症化した場合には、減量や中止を検討します。
8. 患者さんに伝えたいこと
GLP-1薬の副作用の出方には個人差がありますが、多くは一時的で、事前に仕組みを理解し、適切に管理することで継続可能率は高まります。「知らずに不安になる」よりも、「知ったうえで安全に使う」ことが大切です。
ただし、急激な嘔吐、持続する激しい腹痛、黄疸など、いつもと違う強い症状が出た場合は、自己判断で様子を見ず、早めに受診してください。
また、下痢や嘔吐がある際は、こまめな水分摂取を心がけ、脱水を防ぐことが非常に重要です。特に高齢の方、腎機能が低下している方、または脱水になりやすい持病がある方は、より注意が必要です。
※本記事は一般的な医学情報の提供を目的としたものであり、個別の診断・治療を代替するものではありません。治療の適応や薬剤選択については、必ず主治医とご相談ください。
参考文献(抜粋)
- Beutler LR. GLP-1 physiology and pharmacology along the gut-brain axis. J Clin Invest. 2026;136(2):e194744.
- Xie X, et al. Comparative Gastrointestinal Adverse Effects of GLP-1 Receptor Agonists… Front Pharmacol. 2025;16:1613610.
- Crisafulli S, et al. Comparative Gastrointestinal Safety of Dulaglutide, Semaglutide, and Tirzepatide… Ann Intern Med. 2025.
- Davies MJ, et al. Management of Hyperglycemia in Type 2 Diabetes, 2018. Diabetes Care. 2018.
