2026/01/31
【横浜・戸塚駅西口 徒歩10分/駐車場あり】
内科・循環器内科・糖尿病内分泌内科|戸塚クリニック
(院長:村松 賢一)
当院は「内科のかかりつけ」として、
高血圧・糖尿病などの生活習慣病や体調不良、
甲状腺を含む内分泌のご相談まで幅広く対応しています。
予約優先制ですが、予約なしでも受診可能です。
(予約をおすすめする理由は待ち時間を短くするためです。
混雑時はお待ちいただく場合がありますが、症状に合わせて柔軟に対応します)
症状が気になる方は、ご都合のよいタイミングでお越しください。
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最終更新:2026年1月31日
【横浜・戸塚】男性更年期は「年齢のせい」だけではありません
―― 一般記事では触れにくい“背景要因”を、医師が整理 ――

この記事のポイント(3行)
- 男性更年期(LOH)は加齢だけで決まるわけではなく、複数要因が重なります。
- フタル酸など環境要因は因果断定はできない一方、研究上「関連」が議論されています。
- 当院はLOH治療(TRT)は実施せず、採血・鑑別の相談で「状態の見える化」を支援します。
先日、久しぶりに「週刊文春(2026年2月5日号)」の特集記事を読みました。
テーマは「隠れ男性更年期障害(LOH症候群)」。
うつ病との誤診や、30代でも起こりうるリスク、そして心筋梗塞・脳梗塞との関連にも触れられており、一般向けの医療記事として鋭い視点でまとめられていました。
※「関連」が議論されることはありますが、個人の因果関係を断定するものではありません。
ただ、診察室ではこうした相談が少なくありません。
「年齢のせいだから、と言われて終わってしまった」
「うつ病の薬を飲んでいるが、体調が戻らない」
ここに、男性更年期(LOH)を理解しにくくする“構造的な誤解”があります。
「男性更年期」という言葉が生む、最大の誤解

「男性更年期」という言葉は、どうしても“加齢が原因”という印象を強めがちです。
しかし、ここが女性の更年期と決定的に違う点です。
👩 女性の場合:
閉経という生理現象を、原則として全員が経験します。
👨 男性の場合:
「全員」が同じように枯渇するわけではありません。
70代でも高い数値を維持する方がいる一方で、30〜40代で大きく低下してしまう方もいます。
つまり、“年齢だけ”では説明できないのです。
「歳だから仕方ない」で終わらせる前に、原因を“分解して整理”する視点が重要になります。
LOHの原因は「3つの要因」が重なっている
正式名称は LOH症候群(加齢男性性腺機能低下症候群:Late-Onset Hypogonadism) です。
日本語では「加齢」と訳されますが、英語の Late-Onset(遅発性) が本来意味するのは「後天的な発症」であり、必ずしも「老化」だけが原因とは限りません。
だからこそ、以下のような複数の要因(多因子)が絡み合っている可能性を考える必要があります。
① 加齢(ベースラインの変化)
精巣(ライディッヒ細胞)の機能は年齢とともに緩やかに変化します。
ただし、加齢だけでは「急激な不調」や「大きな個人差」を説明しきれないこともあります。
② 生活習慣病(肥満・糖尿病・脂肪肝)
内臓脂肪の増加や糖代謝の乱れは、炎症や睡眠の質低下などを介して、ホルモンの調節(HPG軸)に影響することがあります。
- 「テストステロンが低いと太りやすい」
- 「太るとさらにテストステロンが下がる」
という悪循環に陥りやすい点は重要です。
しかし、注意すべきは「食事のカロリー」だけではありません。
実は、便利な生活の中に潜む「容器」や「化学物質」も、ホルモンバランスに影響を与えている可能性があるのです。
③ 見落とされがちな「環境要因」―― フタル酸(内分泌かく乱物質)

ここが今回、あえて深掘りしたいポイントです。
近年、フタル酸(phthalates)などの曝露と、男性ホルモン指標の関連を示唆する報告が積み上がってきました。
🔰 そもそも「フタル酸」とは?
プラスチックを柔らかくするために使われる化学物質(可塑剤)です。
コンビニ弁当の容器、食品ラップ、日用品などに含まれており、私たちは食事などを通じて日常的に摂取しています。
これが体内で「ホルモンの邪魔(内分泌かく乱)」をする可能性が指摘されています。
\ 詳しく知りたい方はこちら /
⚠️ 重要:ここは“断定しません”
現時点の研究は、「個人のLOHの原因をフタル酸だけで決められる」段階ではありません。
ただし、尿中のフタル酸代謝物(曝露指標)が高い人ほど、血清テストステロンが低い傾向が報告されており、年齢や生活習慣だけでは説明しにくい不調の“背景因子の一つ”として視野に入れる価値があります。
フタル酸:何が分かっていて、何が分かっていないか
ここまでのまとめ
- 分かっている:曝露指標とホルモン指標の関連を示唆する報告がある。
- 分かっていない:個人のLOHを「フタル酸が原因」と因果断定できるわけではない。
- 臨床的に大事:年齢・肥満だけで説明できない時に、背景因子として検討する“補助線”になる。
1) どう影響しうるのか(機序)
総説では、フタル酸(特にDEHPとその代謝物)が、
- 精巣ライディッヒ細胞におけるステロイド合成経路への影響
- 視床下部―下垂体―性腺(HPG)軸の調整への影響
- ホルモンの代謝・クリアランスの変化
といった経路が議論されています(ヒトでは“機序の完全証明”というより、総説としての整合的な仮説整理と理解するのが安全です)。
2) ヒト研究で何が言えるか(疫学)
疫学研究の“強み”
- 実際の生活環境での曝露を反映しやすい(尿中代謝物など)
- 大規模データや系統的レビューで一貫した“方向性”が検討できる
疫学研究の“限界”
- 交絡(肥満・食習慣・社会経済要因など)の影響を完全に排除できない
- 単回測定の曝露指標は日内変動の影響を受ける可能性がある
- 関連は示せても、個人の因果断定には直結しない
なぜ「原因の棚卸し」が大事なのか
もし背景因子(体重増加・睡眠の質・アルコール・薬剤・環境曝露など)が残っている場合、症状の波や再燃が起こりやすくなることがあります。
だからこそ、「数値だけを見る」のではなく、原因を“棚卸し”して組み合わせをほどいていく視点が重要です。
参考:テストステロン補充(TRT)の安全性について
TRTの心血管安全性については、大規模臨床試験(TRAVERSE試験:Cardiovascular Safety of Testosterone-Replacement Therapy, NEJM 2023)で主要評価項目における非劣性(心血管リスクを増大させないこと)が示されています。
一方で、心房細動や急性腎障害などの発生率がわずかに高かった報告もあるため、漫然と投与するのではなく、適切なモニタリングを行うことが重要視されています。
(当院のスタンスとしては、補充の是非の前に、まずは「背景因子の整理」が出発点と考えています)
当院のスタンス:LOHの「治療」ではなく、採血と鑑別相談で整理します

※当院では、LOHの専門的治療(テストステロン補充療法:TRTなど)は行っていません。
一方で、症状がLOHと重なるケースは多く、まずは採血で状態を確認し、似た症状を起こす病態を鑑別することは非常に意味があります。
「何から調べればよいか分からない」「どこに相談すればよいか迷う」という段階で、整理のための相談としてご利用ください。
(戸塚周辺で、まず“原因の整理”から始めたい方に向いたスタンスです)
- 詳細な問診:症状評価(チェックシート〔AMS相当〕)、睡眠、ストレス、生活環境、薬剤歴
- 血液検査:ホルモン指標の確認に加え、貧血・甲状腺など“似た症状”の鑑別
- 全身のリスク評価:血圧、脂質、糖代謝、動脈硬化リスク(疲労・EDの背景評価を含む)
- 生活・環境の棚卸し:体重変化、飲酒、睡眠時無呼吸が疑われる所見、食と容器・加熱習慣など
※必要に応じて、専門医療機関(泌尿器科・内分泌領域など)へご案内することがあります。
「治療」ではなく、まずは状況の見える化のための第一歩としてご相談ください。
よくある質問(Q&A)
Q. 「うつ病」と言われたけど違和感があります。
A. うつ症状とLOHの症状は重なります。抗うつ薬で改善しない場合、ホルモン評価や鑑別(甲状腺・貧血など)を行う価値があります。
Q. 何科に行けばいいですか?
A. 泌尿器科、内分泌内科、メンズヘルス外来が一般的です。まずは採血と鑑別で状況を整理し、そのうえで適切な診療科につなげるのが安全です。
Q. フタル酸を避ければ必ずテストステロンは上がりますか?
A. 個人の改善を保証する形では言えません。ただし研究上は関連が議論されているため、年齢や生活習慣だけで説明しにくいケースで「背景因子」として見直す価値があります(対策は当院サイトのブログリンク記事をご参照ください)。
「年齢のせい」と諦める前に、まずは“状態の見える化”を
原因不明の疲れ、意欲低下、集中力低下、性機能の悩み。
それは生活習慣・睡眠・甲状腺や貧血など、別の原因が隠れていることもあります。
※当院ではLOH治療(TRT等)は行っていません。採血・鑑別相談が中心です。
ご相談時は「男性更年期(LOH)の採血・鑑別相談」とお伝えください
※本記事は、一般誌(週刊文春 2026年2月5日号)の報道を契機に、医学文献を基に補足解説を行ったものです。個別の診断や治療効果を保証するものではありません。
参考文献
1) Tian M, et al. (2022). Journal of Hazardous Materials. [DOI]
2) Liu ZH, et al. (2022). Frontiers in Endocrinology. [DOI]
3) Radke EG, et al. (2018). Environment International. [DOI]
4) Zhang Y, et al. (2023). Journal of Hazardous Materials. [DOI]
5) 日本泌尿器科学会ほか. LOH症候群ガイドライン. [PDF]
6) (内部リンク)当院記事:プラスチックと健康 ― フタル酸アップデート [Link]
