横浜市戸塚区の戸塚クリニック|内科・循環器内科・糖尿病・内分泌内科・甲状腺

戸塚クリニック

総合内科

小児科

循環器内科

糖尿病外来

戸塚駅西口徒歩10分/駐車場10台
🍽️ 食後高血糖に向き合う:ミトコンドリアを整えてβ細胞を支えるという選択
  • HOME
  • ブログ
  • 🍽️ 食後高血糖に向き合う:ミトコンドリアを整えてβ細胞を支えるという選択

🧬 食後高血糖に向き合う:ミトコンドリアを整えて β細胞を支える新しい糖尿病治療の考え方

2025年10月に Science Advances誌 に掲載された研究が注目されています。タイトルは「Functional recovery of islet β cells in human type 2 diabetes」。 糖尿病でも「インスリンを出す力(β細胞機能)」が部分的に回復し得る可能性を示した内容です。

🔍 1. ヒト膵島の研究で観察された“回復の兆し”とは?

研究では、糖尿病の方から採取した「膵島(すいとう)」=インスリンを作る細胞の集まりを、体の外で丁寧に培養し、その働きを観察しました(ex vivo実験:培養試験)

すると、これまで十分に働いていなかったβ細胞の一部が、再びインスリンを分泌できるようになる“兆し”を見せたことが報告されました。 細胞そのものが新しく生まれ変わったわけではなく、「眠っていた細胞が少し目を覚ました」ような状態と考えられています。

研究チームは、細胞内の発電所であるミトコンドリア(OXPHOS)の働きが整い、酸化ストレス(ROS)が抑えられることで、β細胞がもう一度“働ける”環境に近づいたのではないかと推察しています。

  • OXPHOS(酸化的リン酸化)の再活性化 → エネルギー産生が部分的に回復
  • MAFA・PDX1など転写因子の再発現 → β細胞らしさを保つ遺伝子群が再び働く
  • 炎症・酸化ストレスの低下 → 分泌機能を支えやすい環境に

※この研究は実験室での培養(ex vivo)によるもので、実際の患者さん体内で同様の変化が起こることは確認されていません。臨床での“再生医療”を意味するものではありません。

💊 2. イメグリミン(商品名:ツイミーグ®)とは?

イメグリミンは、日本で2021年に承認された経口血糖降下薬で、ミトコンドリアの働きを整える点に特徴があります。細胞内のエネルギーバランスを改善し、インスリンを出す細胞の負担を減らす方向に作用します。

  • 電子伝達系のバランスを整え、ATP産生を安定化
  • NAD⁺量を増やし、代謝力を底上げ
  • 活性酸素(ROS)を抑制して細胞ストレスを軽減
  • 炎症関連経路(ULK1など)を抑制
  • GSIS(血糖応答性インスリン分泌)を改善

イメグリミンは「細胞を再生させる薬」ではなく、「β細胞の働ける環境を整える薬」です。臨床的には、他の薬剤(SGLT2阻害薬・GLP-1作動薬など)と組み合わせて使われることもあります。

🩺 3. 腎機能別の服用量(2025年4月改訂)

eGFR(mL/min/1.73㎡) 服用量・注意点
45以上 1000mgを1日2回(通常量)
15〜45未満 500mgを1日2回
10〜15未満 500mgを1日1回
10未満 禁忌(使用不可)

※透析中の方への投与経験は限られており、慎重な判断が必要です。

⚕️ 4. 服薬時の注意・副作用

  • 飲み忘れた場合は気づいた時点で1回分のみ服用(2回分まとめて飲まない)
  • 食後服用が望ましい(胃部不快感を防ぐため)
  • インスリンやSU薬との併用時は低血糖に注意
  • 腎機能に影響する薬(抗菌薬・造影剤・利尿薬など)は主治医に申告

よくある副作用:悪心、下痢、胃部不快感など。重篤な副作用が疑われた場合は、速やかに医療機関を受診してください。

💬 5. よくある質問(Q&A)

Q1. 新しい薬で不安ですが安全ですか?
→ 2021年の承認以来、国内外で多くの臨床データが蓄積され、安全性は確認されています。

Q2. 高齢者でも使えますか?
→ はい。腎機能や併用薬を確認しながら、用量を調整して処方されます。

Q3. β細胞は再生するのですか?
→ 「再生」というよりも、「一部機能が回復する可能性が観察された」という段階です。臨床的に確立された再生医療ではありません。

Q4. 費用は?
→ 保険適用の薬剤であり、3割負担の場合、月数百〜千円台の目安です(処方条件により変動)。

🩺 院長コメント

β細胞は壊れてしまったのではなく、“休んでいる”だけかもしれません。ミトコンドリアの働きを整えることで、その細胞が再び動き出す可能性があります。 イメグリミンは、その「環境を整える」ことでβ細胞を支える新しい選択肢のひとつといえます。

📝 本記事は一般的な情報提供を目的としています。 実際の治療・薬剤選択・用量調整は必ず主治医にご相談ください。 記載内容は2025年10月時点の承認情報と論文データに基づきますが、今後改訂される場合があります。

参考文献:Science Advances (2025 Oct), PMDA改訂情報(2025年4月), 住友ファーマ添付文書, Poxel Pharmaリリース ほか。

コントラスト調整

1色型色覚
(全色盲)

1型2色覚
(赤色盲)

2型3色覚
(緑色盲)

3型2色覚
(青色盲)

デフォルト

コントラストバー

  • Rr

  • Gg

  • Bb

テキスト表示調整

フォントサイズ

行間

文字間隔

分かち書き設定

音声サポート

Powered by MediPeak