2025/11/11
☕コーヒーは心房細動に悪い?──新たな研究でわかった意外な結果
「カフェインは不整脈のもと?」という通説に、直近の臨床試験(DECAF試験)が新しい視点を示しました。 この記事では、患者さんにわかりやすくポイントを解説します(医療広告ガイドライン2025準拠)。
💡研究の背景
「カフェインは不整脈を起こす」「心房細動の人はコーヒーを控えるべき」と考えられてきましたが、観察研究では 「コーヒーを飲む人の方が心房細動が少ない」可能性も報告されてきました。そこで、アメリカ・カナダ・オーストラリアの研究チームが、 コーヒーを飲む群と完全に断つ群を直接比較する臨床試験(DECAF試験)を実施し、JAMAに掲載されました。
🧪研究デザイン
- 対象者:平均69歳、男女200名(71%男性)
- 条件:心房細動/心房粗動で電気的除細動を受け、日常的にコーヒーを飲んでいた方
- 介入:毎日1杯以上のカフェイン入りコーヒー継続 vs. コーヒー・カフェイン完全断
- 観察期間:6か月
- 主要評価:心房細動または心房粗動の再発
📊結果(主要ポイント)
- 継続群の再発:47%
- 断群の再発:64%
- 再発リスク:約39%低下(ハザード比 0.61)(これは、「コーヒーを飲む人は、飲まない人に比べて再発の起こる確率が約6割(=4割低い)」という意味です。1より小さい数値ほど再発の危険が少なく、1より大きいと危険が高くなることを示します。)
- 安全性:入院や脳卒中など重大イベントに群間差は認めず
※本記事の数値は原著論文に基づく要約です。
☕なぜ減るの?考えられる理由
- アデノシン受容体の抑制:カフェインが心房の過剰興奮を抑える可能性
- 抗炎症・抗酸化:コーヒー成分(例:クロロゲン酸)による炎症抑制の可能性
- 活動量の増加:過去研究ではコーヒー摂取者が平均+1000歩/日、生活習慣改善の寄与が示唆
⚠️注意点と限界
- 試験デザイン:オープンラベル(自分の群を認識)。心理的影響を完全には排除できません。
- 対象集団:欧米の高齢男性(平均BMI約30)が中心。日本人に同じ効果が当てはまるとは限りません。
- 摂取量の範囲:想定は一般的な1日1杯程度。エナジードリンクや高濃度カフェイン製品は対象外。
- 個人差:「脈が速くなる・不安感が出る」などを自覚する場合は、自己判断での中止・再開は避け、主治医と相談してください。
- COI(利益相反):一部の著者は医療機器・製薬企業から研究費や講演料の提供あり。スポンサーは研究設計・結果解釈・公表判断に関与せず。
🩺院長からのひとこと
「心房細動の人はコーヒーを控えるべき」という常識は見直されつつあります。今回の結果は、 適度なコーヒー摂取が心臓のリズム安定に寄与する可能性を示唆します。 ただし、「飲みすぎない」「甘くしすぎない」「睡眠を削らない」といった日常のバランスが最重要です。
戸塚クリニックでは、心房細動の再発予防や生活改善について個別にご相談を承っています。気になる方はお気軽にご相談ください。
本記事は研究の概要を一般向けに紹介するもので、治療の勧誘・誘引を目的としません。診断や治療方針は必ず主治医とご相談ください。
📚引用
Wong CX, Cheung CC, Montenegro G, Caffeinated coffee consumption or abstinence to reduce atrial fibrillation: The DECAF randomized clinical trial. JAMA. Published online 2025-11-09. DOI: 10.1001/jama.2025.21056
