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GLP-1薬は「みんなの薬」になるのか? ――ウゴービ&ゼップバウンド、アメリカの薬価革命と日本のこれからを医師がやさしく解説
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【横浜・戸塚駅西口 徒歩10分/駐車場あり】
内科・循環器内科・糖尿病内分泌内科|戸塚クリニック
(院長:村松 賢一)

当院は「内科のかかりつけ」として、
高血圧・糖尿病などの生活習慣病や体調不良、
甲状腺を含む内分泌のご相談まで幅広く対応しています。

予約優先制ですが、予約なしでも受診可能です。
(予約をおすすめする理由は待ち時間を短くするためです。
混雑時はお待ちいただく場合がありますが、症状に合わせて柔軟に対応します)

症状が気になる方は、ご都合のよいタイミングでお越しください。

▶ WEB予約(24時間受付)
https://wakumy.lyd.inc/clinic/hg08287

▶ クリニック案内
https://www.totsukaclinic.com

 

 

【11月紹介ブログ・アップデート版】

日本の薬価制度と比べると、なぜアメリカは「TrumpRx」のようなディールになるのか

※本記事は、2025年11月に当院ブログでご紹介した「アメリカの薬価引き下げ政策(TrumpRx構想)」に関する解説記事のアップデート版です。

TrumpRx(政府運営の直接購入支援サイト/TrumpRx.gov)とは:
製薬会社が保険を介さず、患者に薬を直接販売する仕組みで、一見すると「薬が安く買える」ように見える点が特徴です。

11月時点では、Donald Trump政権が「製薬会社に対し薬価引き下げを求めている段階」でしたが、その後 2025年12月19日付 New York Times をはじめ複数の報道により、大手製薬会社9社との具体的な合意内容が明らかになりました。

本稿では、その続報を踏まえつつ、当初からお伝えしていた視点――
「日本の医療制度と比べると、なぜアメリカでは政治的な交渉(ディール)が必要になるのか」
を軸に、内容を整理・補足しています。

1.結論から先に

日本では「TrumpRx」のような仕組みは、原理的にほぼ成立しません。

その理由は、日本ではすでに以下の枠組みが制度として組み込まれており、政治的な交渉によって薬価を下げる余地がほとんど存在しないからです。

  • 国民皆保険
  • 公定薬価(国が一律に価格を決定)
  • 自己負担割合と高額療養費制度

2.アメリカの薬価制度は「交渉型」、日本は「制度型」

🇺🇸 アメリカ

  • 薬価は市場価格(事実上、企業が自由に設定)
  • 保険会社・PBM・政府との個別交渉で価格が決まる

その結果…
大統領が「値下げしろ」「関税をかける」「代わりに免除する」という政治主導の合意(ディール)が成立する。
→ これが TrumpRx 構想です。

🇯🇵 日本

  • 薬価は国が一律に決定(公定薬価)
  • 医療機関・薬局による価格差は原則なし

その結果…
政治家が「この企業だけ安く」「直接売れ」と介入する余地がない。
👉 制度がすでに“値下げ後”の状態にあると言えます。

3.「直接購入(TrumpRx)」が日本で成立しない理由

アメリカで起きていること

TrumpRxでは、「保険を使わず」「現金で」「製薬会社から直接購入」が可能になります。
しかし、これは裏を返すと次のようなリスクを孕んでいます。

  • 保険の「年間自己負担上限額(日本の高額療養費制度に相当)」にカウントされない
  • その結果、保険適用患者の多くでは、保険経由の方が結果的に安くなるにもかかわらず、年間トータルの医療費負担がかえって増えるケースが生じ得る

これは、個人の判断(医療リテラシー)に強く依存する「自己責任型」の仕組みといえます。

日本では?

日本では、原則として保険診療が最も安い仕組みになっています。
自由診療で薬だけ購入する方が高額になりますし、何より日本には「高額療養費制度」があります。

日本の高額療養費制度の強み:
どんな薬を使っても(保険適用であれば)、所得に応じた自己負担上限で支払いが止まります。

つまり、特定の薬だけが安く見える TrumpRx とは異なり、制度全体としての安心感のレベルがまったく違います。

4.Medicaid(米国)と日本の保険制度の決定的違い

米国報道では、「Medicaid はもともと最安値が保証されている」と指摘されています。
Medicaid は米国の低所得者向け公的医療保険で、制度上すでに大幅な薬価割引が適用されています。

これは日本で言えば、「生活保護や後期高齢者医療では、すでに自己負担が最小化されている」のと同じ状態です。

つまり、トランプ政権が「Medicaid向けに安くした」と強調している部分は、日本では“最初からそうなっている状態”に相当します。

5.なぜ日本では「関税免除ディール」が起きないのか

今回の米国合意で最も重要だったのは、値下げの見返りが「3年間の医薬品関税免除」だったという点です。

多くの大手製薬会社は、アイルランドやスイスなどで製造した医薬品をアメリカに輸入しています。トランプ大統領は、ここに高関税を課す可能性を示し、製薬会社はそれを回避する権利(関税免除)を事実上「買った」形になります。

日本では、医薬品を政治カードとして関税で揺さぶることはありません。
薬価改定は「定期的・ルールベース・全社一律」に行われるため、個別企業と政治的に取引する余地が存在しないのです。

6.医師の立場から見て、どちらが「患者に優しい」か

🇺🇸 アメリカ

  • 政策演出は派手
  • 一部の無保険者には恩恵
  • しかし、制度が複雑で、判断を誤ると損をする

👉 「賢い人だけが得をする制度」

🇯🇵 日本

  • 派手さはない
  • しかし、価格は事前に分かる
  • 医師も患者も計算不要で、大きく損をする人が出にくい

👉 「普通の人が安心して使える制度」

7.結論(11月紹介ブログのアップデートとして)

TrumpRxが必要になる時点で、制度はすでに不安定です。

もちろん日本にも、「ドラッグ・ラグ」「イノベーション評価」「医療財政の持続性」といった課題はあります。

しかし少なくとも、「政治的な合意次第で薬代が乱高下する」という不安がない点は、日本の医療制度の大きな強みと言えるでしょう。

※本記事は、2025年11月に当院ブログで紹介した初稿を基に、2025年12月19日付 New York Times、White House 発表などの公開情報を踏まえて更新しています。
制度や価格は今後変更される可能性があります。
横浜・戸塚クリニック
院長:村松 賢一

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