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🌿 GLP-1受容体作動薬と「がん」― JCI 2025 総説から読み解く最新の話題
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🌿 GLP-1受容体作動薬と「がん」― JCI 2025 総説から読み解く最新の話題

 

 

この記事は、国際的な医学誌 The Journal of Clinical Investigation(2025年)に掲載された研究をもとに、

患者さんにもわかりやすく解説したものです。

当院の治療方針を示すものではありません。治療の判断は、必ず主治医とご相談ください。

 


 

 

1. 肥満や糖尿病と「がん」の深い関係

 

 

肥満や2型糖尿病が長く続くと、体の中のホルモンや炎症のバランスが崩れ、

さまざまながんの発症リスクが上がることがわかっています。

世界保健機関(WHO)などの研究では、少なくとも次の 13種類のがん に関係すると報告されています。

 

  • 大腸がん

  • 直腸がん

  • 胃がん

  • 肝臓がん

  • 胆のうがん

  • 膵臓がん

  • 腎臓がん

  • 食道がん

  • 髄膜腫(脳や脊髄を包む膜にできる腫瘍)

  • 甲状腺がん

  • 子宮体がん

  • 卵巣がん

  • 乳がん(特に閉経後の女性)

 

 

GLP-1受容体作動薬(例:セマグルチドやチルゼパチド)は、血糖を下げ、体重を減らし、代謝を整える薬です。

そのため、「がんにも何か良い影響があるのでは?」と注目されているのです。

 


 

 

2. 最新の研究でわかったこと

 

 

今回のJCI(The Journal of Clinical Investigation)に掲載された総説では、

世界中の90件以上の研究結果がまとめられています。

結論としては、「GLP-1受容体作動薬ががんを増やすという確かな証拠はない」 というものです。

むしろ、一部のがんではリスクが下がる可能性も報告されています。

 

  • 甲状腺がん:最初はリスク上昇が疑われましたが、検査頻度の違いが原因の可能性が高く、

    最近の研究では明確な差は見られていません。

  • 膵がん:糖尿病や肥満をもつ人では、薬を使っている方が発症が少ない傾向があります。

  • 肝臓・大腸がん:脂肪肝や高インスリン状態の改善を通じて、リスクが下がる可能性があります。

  • 乳がん・前立腺がん:リスク上昇は報告されていません。

  • 血液のがん(白血病やリンパ腫など):発症率が下がる傾向を示す研究もあります。

 

 


 

 

3. どうしてリスクが下がるの?

 

 

まだ研究途中ですが、GLP-1受容体作動薬には次のような体の変化を起こす可能性があります。

 

  • 体の免疫の働きを整え、がん細胞を攻撃する力を高める

  • インスリンが過剰に出る状態を改善し、がん細胞の増殖を抑える

  • 体の中の慢性的な炎症をやわらげる

 

 

つまり、「血糖を下げる薬」というより、

体全体の代謝を整える薬として働いているのかもしれません。

ただし、これらの効果はまだ研究段階で、人への影響は今後の調査が必要です。

 


 

 

4. がん治療と組み合わせた研究も進行中

 

 

海外では、乳がんや子宮体がん、前立腺がんなどの患者さんを対象に、

GLP-1受容体作動薬を併用して再発や体重増加を防ぐ臨床試験が始まっています。

目的は、がん治療を助けるというよりも「体の代謝を整え、全身状態を良くする」ことにあります。

 

なお、これらはあくまで研究段階であり、日本では一般診療として行われていません。

 


 

 

5. 安全性について知っておきたいこと

 

 

  • GLP-1受容体作動薬は がんを治す薬ではありません。

  • 甲状腺や膵臓の病気との関係が一部報告されており、長期的な安全性については引き続き確認が行われています。

  • 他の薬を服用している方や、持病のある方は必ず医師・薬剤師にご相談ください。

 

 


 

 

6. 院長より

 

 

GLP-1受容体作動薬は「やせる薬」として話題になりますが、

本来は「体の代謝を整える薬」です。

代謝が整えば、血糖や体重だけでなく、体全体の健康にも良い影響をもたらすことがあります。

 

研究は今も進んでおり、がんの分野でも少しずつ希望が見えてきています。

これからも信頼できる情報をもとに、皆さんと一緒に健康を考えていきたいと思います。

 


 

 

参考文献

 

 

Valencia-Rincón E, et al. GLP-1 receptor agonists and cancer.

The Journal of Clinical Investigation. 2025;135(21):e194743

 

 

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